今こそ知っておきたい抗ウイルス薬

B型肝炎や天然痘はワクチンの開発で患者数が劇的に減少した

写真はイメージ
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 世の中はコロナ禍の真っただ中。感染者数も増えていて、「感染症の予防対策は果たして効果があるのか?」という疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか?

 確かに、毎日報道される新型コロナウイルスの感染者数を見ると、予防対策は効果がないように思えるかもしれません。しかし、日本国内の感染予防に対する意識が高まっていることや、感染症対策は十分に効果が出ていることは紛れもない事実です。

 理由のひとつとして新型コロナウイルス以外の感染症の患者数が、例年に比べて劇的に少ないことが挙げられます。アメリカやインドなどと比較すると新型コロナウイルスの感染者数が少ないことからも、日本人の感染症とその対策に対する意識の高さや、実践率の高さをうかがい知ることができます。ワクチンができていない現状でも、物理的な対策でここまでの予防効果をあげているというのは素晴らしいことではないでしょうか。

 とはいえ、ワクチンがなくてよいかというと、決してそうではありません。ワクチンによって感染しなかったり、重症化が抑えられたりといった効果が期待できるので、やはり開発は必要です。

 ワクチンによって劇的に患者数が減った例としては、B型肝炎や古くは天然痘が挙げられます。天然痘はかつて死に至る疫病でしたが、ワクチンの開発によって感染者数が激減し、1980年にはWHO(世界保健機関)から「世界根絶宣言」が出されました。

 ワクチンは、効果の強さや持続時間(期間)がワクチン自体や対象となる病原体ごとにさまざまです。そのため普段からの物理的な予防は欠かせませんが、感染症対策においてワクチンは選択肢のひとつとしてあるべきです。新型コロナウイルスに対しても早期に開発されることを願っています。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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