専門医が教える パンツの中の秘密

5歳までにはほぼ治るが…なぜ幼児は「おねしょ」をするのか

写真はイメージ
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 睡眠中に無意識におしっこをしてしまう「おねしょ」。一般的には5~6歳ごろまでに自然と治ります。5歳以降で月1回以上のおねしょが3カ月以上続く場合は、「夜尿症」と診断されます。

 しかし、なぜ幼児はおねしょをしてしまうのでしょうか。これは体の機能が発達途中であることが原因で引き起こされます。健常な成人の場合、通常、夜間の睡眠中の尿量は昼間の60%程度に減少し、膀胱(ぼうこう)容量も1.5~2倍に増えます。

 睡眠中に腎臓で作られる尿量が減少するのは、睡眠中に「バソプレッシン」と呼ばれる「抗利尿ホルモン」が脳の下垂体から多く分泌されるからです。睡眠中に膀胱容量が増えるのは、自律神経の作用によるものです。幼児は、この2つの機能が未発達なため、睡眠中の尿量が膀胱容量を超えてしまうのです。加えて、子供は生理的に睡眠が深いので目を覚ますことができず、おしっこを漏らしてしまうのです。

 腎臓には、毎分約1.2リットル(1日約1700リットル)もの血液が心臓から流れ込んでいます。その大量の血液は腎臓の糸球体というところでいったんろ過されて、そのうち約170リットルが「原尿」という尿の原料になります。その原尿は腎臓の尿細管で、さらに水分や成分が再吸収されます。そして、最終的に尿として排出されるのは、ろ過する血液の0.1%程度(約1.7リットル)です。

 バソプレッシンは、尿細管での再吸収を促進させて尿量を減少(尿を濃縮)させ、体内の水分量が不足しないように調節しているのです。睡眠中だけでなく、「脱水が激しい時」「塩辛いものを多く食べた時」なども分泌が高まります。

 しかし、このような機能が発達している大人でも「夜間頻尿」や「夜間多尿」ということが起こります。加齢によって膀胱自体の弾力性が低下して、膀胱容量が減るということもありますが、糖尿病で多尿になったり、前立腺肥大が頻尿に影響したり、大人の場合は持病が関係してきます。

 特に、高血圧や心疾患で心臓に負担がかかると、自然と夜間に尿を多く作るシステムが作動します。これは心臓から「心房性ナトリウム利尿ペプチド」というホルモンが分泌されるからです。腎臓に作用して尿量を増やし、体内の水分量を減らして心臓の負荷を減らそうと働くのです。

 なぜ夜間に尿量が増えるかといえば、体を横にしている睡眠中の方が心臓から腎臓に血液を送るエネルギーが少なくて済むから。このように体は巧みに尿量を調節しているのです。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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