みんなの眼科教室 教えて清澤先生

稲妻のような光と片頭痛に関係はあるのか?

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写真はイメージ(C)PIXTA

【Q】月に一度くらいの頻度で目の前に稲妻のような光が見えて、その後に片頭痛が起きます。稲妻と片頭痛は関係があるのでしょうか?(30歳女性)

【A】視界の中心付近に突然ギザギザした光が現れて周辺に広がり、光のかかったところが白く光って見えなくなる現象を「閃輝暗点」といいます。閃輝暗点は、後頭葉の視覚領域に脳血管の機能的な異常収縮が起き、一過性の脳虚血が生じることにより生じます。20~30分でこの症状は消失します。閃輝暗点に続いて片頭痛がおこるケースもあります。これは、血管の収縮に引き続いて血管の拡張が起こることで頭痛を引き起こすと考えられます。ご質問の方は、このケースにあたります。しかし、片頭痛をともなわない閃輝暗点もあります。

 片頭痛は、ズキンズキンと脈打つような拍動性の激しい痛みが頭の片側または両側、あるいは後頭部に生じ、悪化すると吐き気や嘔吐、光や音に対する感覚過敏といった頭痛以外の症状をきたします。発作の起こる回数は、月に1回から週に2回と患者ごとに差があり、いったん発生した頭痛は1~2時間でピークに達しますが、4~72時間持続します。その結果、患者さんは仕事や勉強などもできず、寝込んでしまうこともあります。片頭痛の頻度は15歳以上の人口の8.4%を占め、男性3.6%、女性で12.9%と女性に多く、年齢別では30歳代が多いとされます。片頭痛のなかには高率に前兆がみられるものがあり、閃輝暗点は視覚性前兆で眼科を受診される方も多いのです。

 片頭痛の診断としては、症状の特徴と経過、および発生頻度など、症状についての診断基準に基づいた問診が最も重要とされています。脳血管障害や腫瘍性疾患など、頭痛をきたす原因となる他の器質的疾患を否定するためにCTやMRIなどの画像診断をおこなうこともあります。血管の攣縮を止める薬剤を処方して,その発作がこの薬剤で抑制され、痛みを頓挫させることができれば片頭痛と診断されます。

 片頭痛の治療には予防薬、予兆時に使用する薬剤、そして発作時に使う薬剤があり、これを使い分けることになります。予防薬には、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩または、カルシウム拮抗薬などが用いられます。次に閃輝暗点をはじめとするアウラがみられたときにはジヒドロエルゴタミンメシル酸塩が用いられます。この使用は、片頭痛発作の早期であることが必要で、発作が起きた際には、軽度発作であれば非ステロイド系消炎薬その他が有効です。また重症発作には経口トリプタン製剤が用いられます。

 閃輝暗点は必ずしも頭痛を伴わないので,患者に対して片頭痛という語を使う際に私は誤解されないような注意をしています。片頭痛は年齢によって起きやすい時期がありますが,長期にわたってこの病気と付き合ってゆく自覚を患者に持っていただく必要があります。

清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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