今こそ知っておきたい抗ウイルス薬

「免疫グロブリン製剤」は抗体そのものを薬にする

写真はイメージ
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 ウイルス感染症の治療で用いられている薬には、抗ウイルス薬以外に「免疫グロブリン製剤」というものがあります。

 最近、新型コロナウイルスの治療薬やワクチン開発に関するニュースで、「感染歴がある患者の血液からつくる薬」が取り上げられていますが、これが免疫グロブリン製剤です。

 免疫グロブリン製剤は、抗体そのものを薬にしたものです。ワクチンは抗原を体に入れることで、体の中で抗体を作るのを促すのに対し、免疫グロブリン製剤は感染歴のある人の血液から抗体=免疫グロブリンを取り出し、製剤化したものです。

 免疫グロブリンはヒトの免疫の中で大きな役割を担っています。主に血液の液体部分である血漿中や母乳中などに存在しています。免疫グロブリン製剤は人の血漿から免疫グロブリンのみを分離・精製して医薬品にします。人の血液を原料としているため、ウイルスなどの感染性物質が混入するリスクを完全に取り去ることはできません。しかしだからこそ、一般的な薬で行われる安全性確保に加え、さまざまな対策がされた上で製剤化されています。

 免疫グロブリン製剤は、抗生物質が効かない重症の感染症や、川崎病、重症筋無力症など、免疫の減少や免疫異常といった「免疫が必要な症状」に対し、免疫を補う目的で使われてきました。

 さまざまな抗体を含んだものなので、いろいろな感染症や病気に対して効果が期待できます。新型コロナウイルスに罹患歴のある患者の血液を用いることで、新型コロナウイルスに対する抗体が多く含まれている免疫グロブリン製剤を作ることができるというわけです。

 抗ウイルス薬やワクチンに加え、免疫グロブリン製剤も有力な治療薬のひとつといえます。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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