コロナ禍のインフルエンザ対策<上>唾液が付くものを共有しない

横並びの方が飛沫対策には良い
横並びの方が飛沫対策には良い

 今年の秋・冬は新型コロナウイルスの大流行が危惧される中で、「季節性インフルエンザ」(以下、インフル)のシーズンに突入する。海外ではコロナとインフルの重複感染がいくつも報告されている。家庭内では、どう対策を取ればいいのか。「池袋大谷クリニック」(東京都)の大谷義夫院長に聞いた。

「新型コロナもインフルも、主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。どちらも感染予防の基本は『マスクの着用』と『手洗いの徹底』であることは変わりありません。しかし、新型コロナとインフルで大きく違うのは、新型コロナは発症前に他人にうつしてしまうところ。自宅でも家族それぞれがマスクをし、3密を避けることが大切です。新型コロナ対策が、そのままインフル対策になるのです」

 たしかに、東京都では新型コロナ新規感染者のうち、感染経路が判明している約4割は家庭内感染で占められている。

 家庭内で家族が集まって3密の場面になりやすいのは、食事のとき。当然マスクを外すので、感染リスクも高くなる。

 食事のときの飛沫対策は、人数が多ければ時間をずらしたり、極力しゃべらないようにする。できれば食卓を囲むのではなく、横一列に並ぶ、もしくは席の位置をジグザグにするといいという。

 家庭内の接触感染を防ぐには、唾液が付くものは共有しないこと。コップ、ペットボトル、歯ミガキ粉、タオルなど。洗面台も歯ミガキのうがいのときに唾液をまき散らすので、常に掃除しておくべき場所だ。

「新型コロナはステンレスやプラスチックの上では3日間くらい生きているといわれます。室内の取っ手やノブなどの部分も、こまめにアルコール消毒をする。できれば玄関に消毒液を置いておき、帰宅したら玄関で手を消毒してから室内に入り、ウイルスを自宅に持ち込まないのがいいでしょう」

 新型コロナに対する室内の温度・湿度管理の有効性は、まだはっきりしたデータは出されていない。

 インフルに対する有効性は、1961年にG・J・ハーパーが発表したウイルスの生存率の実験結果では、低温低湿度で活動が高まった。

 一方で、2018年に発表された米ピッツバーグ大学医学部からの報告では、7段階の湿度(23、33、43、55、75、85、98%)でインフルウイルスはどの相対湿度でも感染力が弱まらなかった。

 インフルウイルスの活性に関する適正湿度に関して結論は出ていないが、線毛などののどの免疫防御機能を考慮すると「室温20~22度くらい、湿度50~60%くらい」に保つのが目安とされている。

■インフルエンザの予防ワクチン接種は10月スタート

「それにインフル対策で、最も有効なのはワクチン接種です。ワクチンの供給は例年通り10月から始まりますが、高齢者や基礎疾患をもつ人には10月中旬から、健康な人では10月下旬から接種を勧めようと考えています。それはワクチンの持続効果は5カ月くらいで、インフルの感染は通常10月上旬よりも3月上旬の方が多いからです」

 65歳以上では肺炎球菌ワクチン(23の型に対応)の定期接種も行われている。

 今年から13の型に対応したワクチンが年齢制限なく任意で受けられるようになっている。50~60歳代で基礎疾患をもつリスクの高い人は、受けておくといいという。

 インフルエンザは流行時期に合わせ、毎年、第36週(8月末~9月初旬)から翌年の第35週までの1年間がインフルエンザシーズンとされている。そのため「2020~2021年」シーズンは2020年8月31日から2021年9月5日までとなる。

 ちなみに2020年第37週(9月7~13日)のインフルエンザ発生状況は「4」。昨年同期が「5738」だから大幅に減少している。

 そのせいか、いまのところインフルエンザワクチン接種について目立った混乱は起きていないが、厚生労働省は11日に各自治体に対し、インフルエンザワクチン接種に関する事務連絡を行い、接種が始まる10月初めは65歳以上を優先し、そのほかの人は「10月26日まで接種をお待ちください」と、呼びかけている。

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