役に立つオモシロ医学論文

米誌で研究論文 ヒトはやせるとどれだけ長生きできるのか?

写真はイメージ
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 肥満の予防や改善は健康的なイメージがあります。確かに、成人期の体重増加と健康リスクの関連性については、これまでにも複数の研究が報告されています。しかし、肥満を改善することによって、どれほど余命が延びるのか、詳しいことはよく分かっていませんでした。そんな中、肥満の改善と死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナル誌に2020年8月3日付で掲載されました。

 この研究では、米国で実施された国民健康栄養調査のデータから2万4205人(平均54・2歳、男性51%)が対象となりました。研究参加者に対して、25歳時点の体重と10年前(平均44歳)の体重について調査を行い、BMI(体重と身長から算出する体格指数)の変化と死亡リスクの関連性が検討されています。なお、結果に影響を与えうる年齢、性別、喫煙状況などの因子について、統計的に補正を行い解析されました。

 平均で10・7年にわたる追跡調査の結果、肥満が持続していた人(BMI30以上)と比較して、肥満が改善した人(BMI25以上30未満)では、死亡のリスクが54%、統計的にも有意に減少しました。

 この研究では、早死にしてしまう原因の12・4%が成人初期から中年期の肥満によるものであると見積もられています。ただ、体重に関する情報は研究参加者の自己申告に基づくものであり、厳密な解析ができていたかどうかについては議論の余地がありそうです。

 また、日本人でBMIが30を超えるような人は少なく、この結果を広く一般化することも難しいように思います。とはいえ、肥満の改善が健康の増進に重要であることを示唆する貴重なデータであることは間違いありません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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