専門医が教える パンツの中の秘密

20~30代に多い 精液に血が混じるのは珍しいことではない

写真はイメージ
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 性交やマスターベーションで射精したとき、精液に血が混じっていたらビックリします。そして、慌てて泌尿器科や性感染症科を受診することでしょう。しかし、精液に血が混じることは決して珍しいことではありません。

 精液に血液が混入した状態を総称して「血精液症」といいます。20~60代の幅広い男性に見られ、特に20~30代に多いとされています。一般的に、血精液症以外に射精時の痛みなど他の症状はほとんどありません。それが不気味で怖くなる人も多いと思います。

 では、どこから出血しているのでしょうか。精液は液体成分と細胞成分(精子)で構成されています。液体成分の約3割は前立腺の分泌物で、約7割が精嚢(せいのう)からの分泌物が占めています。ですから出血部位は多くの場合は、前立腺または精嚢です。もし、出血部位が尿道や膀胱(ぼうこう)の尿路であれば血尿も起こるからです。

 精液に混じった血液の見え方は人によって異なります。出血の時期が古ければ茶褐色や、どす黒くなり、血液の塊が混じることもあります。比較的新しい出血であれば、ピンク色や鮮血色の明るい色になります。

 考えられる原因としては、精嚢または前立腺の「炎症」、座りすぎなどで起こるうっ血による「循環障害」です。他には精子輸送路(精巣、精巣上体、精管、精嚢、前立腺)の「腫瘍」「嚢胞」「結石」なども考えられます。

 しかし、実際には検査しても異常が確認できない「特発性血精液症」と診断されることが多いです。

 検査は、ペニスと精巣・精巣上体の視診や触診。前立腺・精嚢の直腸診(肛門から指を挿入して調べる検査)や超音波検査。尿検査や精液検査。尿検査で血尿を伴う場合には、膀胱や腎臓の超音波検査を行うこともあります。

 中高年の患者さんは前立腺がんの有無を調べる腫瘍マーカー(PSA)の血液検査も行いますが、血精液症でがんが見つかる確率は高くはありません。

 検査で精子輸送路に炎症が見つかれば、抗生物質や抗炎症薬で治療します。特発性と診断された場合には治療の必要はなく、経過観察をします。その後、他の症状が出れば再検査を行います。ただし、精嚢にたまった古い血液が消失するまで、1~2カ月かかる場合もあります。

 また、最も気になるのは血が混じっている期間中、性交をしていいかどうかでしょう。もちろん炎症の原因が性感染症であれば、治るまで性交はできません。特発性ならパートナーに悪影響を及ぼすことはありません。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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