AIが築くクスリの未来

医療業界はデジタルトランスフォーメーションが進んでいない

医療業界は意外にも「DX」が進んでいない
医療業界は意外にも「DX」が進んでいない(提供写真)

 さまざまな業界で人工知能(AI)などの情報通信技術(ICT)が浸透しようとしています。デジタルインフラが整備され、広まり、当たり前のように使われている状態、またそうした状態が生活を良い方向に変化させることを「デジタルトランスフォーメーション」と呼び、「DX」と表記される場合もあります。

 実は医療業界は、意外にもDXが進んでいない業界のひとつです。技術が急速に進歩しているのにDXが進まないのは、人的要因が大きいかもしれません。DXを進めるためには、業界特性を把握することがとても重要です。仕事をする上で、何に手間がかかっていて、どこを効率化すべきなのか。また、それはICTを用いて改善できることなのかをしっかりと把握しなくてはならないということです。課題を見つけ、整理し、デジタル技術で解決していくケースを積み重ねることでDXが進むのです。

 ただ単にICTを取り入れるだけではDXは進まず、仕事は効率化しません。

 たとえば、ガラケーからスマホに替えただけで、劇的に仕事が効率化するかというとそうではありません。スマホの機能を使いこなし、仕事やその管理をスマホで行えるように身の回りの環境を変化させることで、ようやく仕事や生活が効率化するのです。

 DXを進めて仕事や生活を効率化するためにはICT機器の導入だけでは不十分で、運用する側の「効率化したい」という意志や、効率化できるように業務内容を見直すなどの方がむしろ重要です。

 他の業界でも同じかもしれませんが、医療業界でDXが進まないのは、「業務効率化はしたいけど、業務フローを見直したくない」といった矛盾した考えを同居させている人が多いからかもしれません。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

関連記事