病気を近づけない体のメンテナンス

唾液腺<下>質の良いサラサラ唾液を出すコロコロガム法とは

写真はイメージ
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 体内への入り口である口では「唾液腺」から常に唾液が分泌されていて、病気から体を守る免疫力の一翼を担っている。唾液には、口内を清潔に保つ自浄作用、病原菌に対する抗菌作用(免疫作用)、口内を中性に保ち常在菌の活動を抑える緩衝作用などがあるからだ。そして唾液の流れ(循環)によって、病原菌などは胃に送られ殺菌されている。

 唾液には「サラサラ唾液」と「ネバネバ唾液」があり、両方のバランスで口内は良い状態が保たれている。リラックスしているときは副交感神経が優位に働き、サラサラとした唾液が多く分泌され、唾液の流れがいいので免疫力が維持されている。一方、交感神経が優位に働いているときにはネバネバとした唾液が分泌される。また、心身にストレスを感じているときには、舌の動きも悪くなり、唾液の流れが滞るので免疫力が低下する。

 では、質のいいサラサラ唾液の分泌を促進させる簡単な方法はないのか。「イーブレスクリニック心斎橋」(大阪市)の本田俊一院長(歯科医師)が言う。

「たっぷりと唾液を出し続ける方法に、口内の異物反射を利用した『コロコロガム法』があります。無香料・無糖で、硬めの噛みごたえのあるガムを口に含みます。球体を作れるようになるまでよく噛みます。よく噛むことで、唾液が分泌されます。次に、球体となったガムを舌の上に置き、異物として認識させることにより、しっかり唾液を分泌させることができます。自然と口の中にスペースができるので、無意識に舌が動くようになり、ますます唾液が湧き出すという仕組みです」

 ガムを一度球体にしてしまったら、舌の上で転がし続ける。小さくコロコロさせているだけなので、外から見てもガムが口に入っているようには見えない。会話をするときは素早く、上顎の奥歯の歯肉と頬の間に挟む。

 この状態でも頬にある唾液腺を刺激するので、サラサラした唾液が出やすくなる。ガムは、毎食後に1粒噛めば十分。精神的に緊張していても口腔内はリラックス状態になるので、唾液の流れが良くなり、口の中がネバネバした不快感が解消できるという。

 また、口呼吸のクセがあると、口の中が乾燥して唾液の免疫力や自浄性が低下し、風邪やインフルエンザにかかりやすくなる。コロコロガム法を行っている間は、口では息ができないので、口呼吸も無理なく治すことができるわけだ。

 唾液の流れを確保するためには、唾液の分泌を増やすだけではなく、「唾液をのみ込む」という舌の動き(嚥下)も重要になる。検査で舌の上の唾液量を測定すると正常でも口の渇きを訴える人が多いという。

「それは唾液の流れが悪いことが原因で、背景にストレスがあります。仕事などのストレスや緊張によって、無意識に奥歯を接触(噛みしめ)させてしまうことで、舌が動かなくなって唾液の流れを阻害するのです。そのため口の中がネバネバしたり、口臭が強くなったりするのです」

 特に、スマホ依存によるドライマウスが増えているという。それは目線を下に向けているため、常に奥歯が接触している状態になるからだ。対策は、目線を水平に維持して、奥歯の接触が起こらないようにすること。パソコンやスマホを長時間操作するときは、時々、顔を斜め45度上に向けて唾液をのみ込む嚥下反射を促すといいという。

■歯磨きは起床直後と就寝直前だけでOK

 日頃の習慣にも注意することがある。「食後に歯を磨く」という歯磨き習慣だ。実は、食後に歯を磨く習慣は世界の中でも、日本をはじめ少数の国だけだという。

 歯を磨く正しいタイミングは、「起床直後(朝食前)」と「就寝直前」。それは口内の細菌数が最も多くなるのが起床直後で、最も少なくなるのは唾液が多く分泌されて、食事と一緒に細菌をのみ込んでしまう食後だからだ。

「日本を除く先進国では、食後は歯をブラッシングするのではなく、唾液の分泌を促すガムやタブレット、または、中和するためにデンタルリンスで『口腔ケア』をするのが一般的です。飲食後は歯ブラシで歯垢を取る必要はなく、舌の上や歯に詰まった食べカスと飲みカスを処理することと、酸性化しやすい状態を中和してくれる唾液をいかに活用するかが大切になるのです。食後に歯磨きをして口をすすぐのでは、唾液が喪失してしまい逆効果です」

 夜の歯磨きも夕食直後ではなく、2~3時間あけて就寝直前に磨くようにしよう。唾液がどれだけ出て循環がいいかで、寿命が変わると言っても過言ではないという。

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