ビートルズの食生活から学ぶ健康

「化学的に処理されたものは食べない」がジョンの食生活

食生活にもヨーコの影響が!
食生活にもヨーコの影響が!(C)ゲッティ=共同

 以前にもお話しした通り、ジョンは、ジョージの影響もあって、1967年ごろにベジタリアン(菜食主義)の食事を経験しています。

 インドに滞在した際にも、ジョンはスパイスの効いたベジタリアン用の食事で十分満足することができました。

 インドから帰国後、あるトークショーで「瞑想を通して、僕はいつも自分自身に内在しているスペシャルエネルギーに触れることが可能になったんだ。昔なら、物事がうまく運んで調子の良い日にだけ、このエネルギーに気づいたんだけどね」と述べています。

 アルバム「レット・イット・ビー」に収録されている名曲「アクロス・ザ・ユニバース」(実質、ジョンの作品)はインドでの瞑想世界から生まれました。

 インド訪問後のジョンはシンシアと別れ、69年にヨーコと再婚。以来、彼女を通じて日本文化の影響を受けることになります。

 ビートルズ解散後、世界的に大ヒットしたジョンの代表作「イマジン」のコンセプトに、ヨーコが大きく関与していることがその後、広く知られるようになり、共作者としてヨーコの名前の併載が3年前に認定されました。

 ニューヨーク時代のジョンとヨーコを撮影した写真家ボブ・グルーエンは「玄米を中心とする自然食をジョンにすすめていたのはヨーコだ」と述べています。ジョンは68年11月7日に描いたイラストエッセーの中で、「玄米中心の自然食療法であるマクロビオティックに基づき10日間玄米食を続けたところ、体がシェイプアップされ、素晴らしい身のこなしになった」と記しています。

 69年1月13日のレイ・コールマンのインタビューに答え、ジョンは当時、自分でマクロビオティックの食材を育てられる農場を探していたそうです。

 理想はロンドンから2時間以内の場所で、8エーカー(約3・24万平方メートル)ほどの敷地には湖や小川があって、鶏を飼うことを望んでいたようです。

 マクロビオティックに従った食生活は、禅や瞑想の効用と酷似していると話しています。「自分にとって一番だと思うものを食べるのがよく、多くの人が食べているような化学的処理が施された食材の多くは食べるのに値しない」と指摘しています。

 ジョンが食するに値すると考える「化学的処理の施されていない食材」というのは、現在でいうところの有機野菜のことで、彼はオーガニックライフの先駆者といえるでしょう。

 69年3月20日、ジョンとヨーコはジブラルタルで結婚、その後、ロンドンのアップル事務所には2人して通うようになります。事務所に着くのはだいたい昼食の時間帯で、玄米と野菜にたまりソースをかけたマクロビオティック食(日本では当時「超自然食」と称していたもの)を食べています。

 ジョンは、その当時、「玄米にはまっている」と話していて、瞑想やドラッグのような面倒な手間をかけなくても、玄米食にすることで同じような効果がもたらされる、と感じていたようです。

「あなたは、あなたが食べたものでできている」

 これは、ジョンが自らの食生活を相手に説明するときに使った、古くから伝わることわざです。体内に蓄積されていたものがデトックス(解毒)され、ストレスや苦悩からも解放されたジョンの心が表れています。

松生恒夫

松生恒夫

昭和30(1955)年、東京都出身。松生クリニック院長、医学博士。東京慈恵会医科大学卒。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。近刊「ビートルズの食卓」(グスコー出版)のほか「『腸寿』で老いを防ぐ」(平凡社)、「寿命をのばしたかったら『便秘』を改善しなさい!」(海竜社)など著書多数。

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