進化する糖尿病治療法

太らないために正月休み前に知っておいてほしい2つのこと

(C)PIXTA

 2020年の本連載も今回が最後。読者のみなさんの中には、ひと足早く仕事納めをした方もいるのではないでしょうか? 例年、年末年始は太りやすく、結果的に血糖、血圧、脂質の数値が上がりやすい。理由としては、忘年会、新年会で摂取カロリーや飲酒量が増えること。お正月で非日常の日々が続き、生活スタイルが乱れやすいこと。“食っちゃ寝”の数日間で、しかも食べるものが塩分や砂糖の量が多いおせち料理、太りやすい餅に偏りがちなことなどが挙げられます。

 血糖、血圧、脂質は一年の中でも変動し、秋から冬は、春から夏にかけての季節より数値が高くなることも、私たちの研究で明らかになっています。食生活の乱れ、活動量の減少、季節的な要因というトリプルパンチで「年明け、測定したらびっくり」とならないように、少しだけ気をつけた年末年始を過ごしてください。

 休み期間中、ぜひみなさんにやっていただきたいのは、1日のうち1回は、ストレッチや軽い運動をすること。テレビを見ながらつま先立ちをするのでもいい。スクワットもお勧めです。自宅の中ででき、筋肉量が多い下半身を鍛えられます。人通りが少ない場所を散歩するのもいい。

 ダイエットのために半年前から夫婦で散歩を始めたYさん(46歳)は、歩くことでポイントが貯まるアプリをスマホにインストールし、モチベーションを高めています。

 歩いて貯めたポイントは買い物に使ったり、懸賞の応募に利用できます。

 Yさんは散歩の時間だけでなく、仕事などの移動の際も「ポイントを貯めるために、もうちょっと歩こう」という気持ちが芽生え、ひと駅くらいは“普通に”歩くようになったそうです。いろいろなタイプのアプリがあるので、自分が使って楽しいと思えるものを選んでください。

■増えてしまった体重を落とすのは結構大変

 休み中は、体組成計で体重、体脂肪率、筋量などを測るようにするのもいいでしょう。ずいぶん昔に「レコーディングダイエット」が流行しました。毎日、体重や体脂肪率を測定し、記録をつける。体重などの変動が一目瞭然なので、自然と「昨日は食べすぎたから今日は抑えよう」など、食事量やバランスに意識が向くようになります。

 40歳の誕生日に一念発起し、ダイエットを開始したHさん。彼は半年間で10キロのダイエットに成功したのですが、やはり毎日体重や体脂肪率を測り、スマホにメモしたそうです。

 ダイエットを始める前は、体組成計を持っておらず、体重、体脂肪率をまったく把握していなかったとのこと。「正直、太っているという認識もなかったかもしれない」と言います。

 Hさんは体重などとともに、食事内容も毎食メモ。コーヒーやお茶、ワインやビールなど飲み物も漏らさずメモしました。おやつを食べた時はそれも忘れずに。あとで見返して、「ここで体重が増えた理由は、○○○を食べたからかな」と考えるようにしていたそうです。

 食事メモで良かったのは、たとえば大好物の鶏の唐揚げも、1~2個程度食べる分には問題ないと分かったこと。鶏の唐揚げを食べて、ご飯を丼いっぱい食べ、ポテトサラダやマカロニサラダを付け合わせにするから良くないのであって、たっぷりのキャベツの千切りを食べ、鶏の唐揚げを数個、付け合わせは野菜の煮物や冷ややっこというようにすれば、体重を維持できる。また、毎日の変動を意識しすぎるより、数日単位や1週間単位で帳尻を合わせるようにし、好きなものも食べながら、体重をコントロールする方法も“メモ”で身につけました。もし可能であれば、家族の中で情報を共有するのもいいかもしれません。

 せっかくのお正月。気ままに自由に過ごしたい気持ちも分かりますが、増えてしまった体重を落とすのは結構大変です。できる限り、増やさない。すっきりした体で新年を迎えましょう。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

関連記事