乳児の「夜泣き」を卒業させるために…体内時計を調整する方法

起床時にはカーテンを開けて朝日を浴びさせる
起床時にはカーテンを開けて朝日を浴びさせる

 11都府県に2度目の緊急事態宣言が出て、多くの人がステイホームを強いられている。中には幼い子供の夜泣きや、なかなか寝付けず朝起きられないわが子に手を焼き、ストレスがたまるお父さん、お母さんもいるかもしれない。どうしたらいいのか?「時間×食事で賢い子が育つ! 簡単・最強子育て」(幻冬舎)の著者で、「時間栄養学」の専門家である愛国学園短期大学非常勤講師の古谷彰子氏に話を聞いた。

「乳児が夜泣きをする原因のひとつに体内時計ができていないことが挙げられます。夜きちんと眠れるように体内時計を整えてあげることが大切です」

 体内時計とは、地球上に住むすべての生物に備わる生体リズムを調整するメカニズムのひとつのこと。朝目覚め、夜になると眠くなるのは体内時計の働きによる。ホルモンや自律神経の働きなど全身の機能も調整していて、体内時計がある場所は目と脳を結ぶ左右の視神経が交差する視交叉上核あたりとされている。われわれは毎朝、食事や光などの刺激により、体内時計をリセットすることで地球が刻む24時間に生体リズムが合うようになっている。

 そこで、ある乳児に体内時計をつくるために次のような環境を与えたという。

①夜8時以降は、暗闇に寝かせる

②授乳も暗闇で行い、スマホやテレビ、音楽などの光と音を遮断する

③朝になったら必ずカーテンを開けて日光を浴びさせる

 これを徹底した後、ミルクの量を増量するタイミングで、夜8時↓夜12時↓朝4時、夜8時↓夜2時↓朝5時、夜8時↓朝4時、夜8時↓朝5時というように、様子を見ながら10日置きごとに授乳の間隔を延ばすことで、67日目にして乳児の夜間長時間睡眠が可能になったという。

「このケースを基に、63人の保護者に授乳環境のアンケート調査を実施したところ、そのうち97%が授乳時に明るい部屋、もしくはテレビやスマートフォンをつけた状態での授乳を行い、乳児の夜泣きに悩んでいることがわかりました。そこで、夜間の授乳環境を完全消灯下で行い、起床時にはカーテンを開けて朝日を浴びるようにしたところ、夜泣きが改善した割合は、開始2週間で43・2%、開始1カ月で55%、開始3カ月で86・7%となりました。しかも、開始3カ月後には夜間の長時間睡眠に成功した乳児も64・3%に上ったのです」

 夜泣きが改善しなかった方では、授乳時に音楽を聞いたり、家族で話をしたり、生活音がうるさかったことがわかったという。

■小学生以上の睡眠の乱れはおやつに工夫を

 夜に寝ない、朝は起きられない、という幼児や小学生らにはどのような対応がいいのか?

「小学生までには、体内時計はすっかり完成されているので、夜寝ない、朝起きられないのは、体内時計が整っていない可能性があります。自分の体内時計が夜型か朝型かを調べるクロノタイプ診断というもので生活スタイルに合った体内時計を得ているかがわかります。体内時計が整っていない場合の改善策は乳児と同じです。就寝時に光を完全に遮断して、睡眠中に音などの刺激を与えないことです。そして朝起きたら、必ずカーテンを開けて光を全身に浴びることが重要です。加えて朝食もきちんと食べる。朝食は一日の活動に必要なエネルギーを得るだけでなく、体内時計のリセット効果が増強されるからです」

 朝食は食べる時間だけでなく、その内容によって体内時計のリセットする度合いが違ってくる。朝食にはタンパク質と炭水化物を取り入れるのがおすすめだという。

「米、麦、トウモロコシといった穀物系の炭水化物は、脂肪を蓄える作用のあるインスリンを多く分泌させます。インスリンは体内時計をリセットする力が強い。同時にインスリンの分泌を促す魚油を多く含む、魚のタンパク質を取るといい。忙しい人はツナ、サバ、イワシなどの缶詰を使って、おにぎりにして食べさせるのも手です」

 また、おやつを取ることで、太らない、よく眠れるということもわかってきたという。

「おやつは3食では足りない栄養を補うためのものですが、昼食と夕食の間におやつを挟むことで夕食後の血糖値が上がりにくくなることがわかっています。これをセカンドミール効果といいます。血糖値の上昇が緩やかであれば、インスリンの分泌量だけでなく、体内に取り込む脂肪量も減ります。また、良質な睡眠が取れる可能性もわかってきました。おやつの食べ過ぎはNGですが、グラノーラのように食物繊維が豊富で、カロリーが100キロカロリー程度のものなら、おやつを食べさせるのもいいと思います」

 十分な睡眠と、整った生活リズムでイライラも少なくなる。もちろん、このやり方は大人でも効果がある。あなたも試してみては?

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