帯状疱疹は合併症が怖い 水ぶくれと痛みがあればすぐ病院へ

子育て世代に増えている(写真はイメージ)/
子育て世代に増えている(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 50歳以上で患者数が増えるのが帯状疱疹だ。ところが最近、20~40代の子育て世代で帯状疱疹を発症する率も増えている。高齢者においては珍しくない病気で、80代では3人に1人がかかるともいわれている。帯状疱疹について知っておきたいことを日大医学部付属板橋病院皮膚科病棟医長の葉山惟大医師に聞いた。

「とにかく念頭において欲しいのは、皮膚に痛みがあり、水疱(水ぶくれ)が出てきたらすぐに皮膚科を受診するということです」

 帯状疱疹は、過去にかかった水ぼうそうが関係して起こる病気だ。水ぼうそうは主に子供時代に発症する。その時、水ぼうそう自体は治るが、水ぼうそうウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)は体内の神経節に潜んだままになる。症状が出ないのは、水ぼうそうで獲得した免疫力が働いているからだ。

 ところが成人になり、加齢、疲労、ストレスなどで免疫力が低下すると、水ぼうそうウイルスが活動を再開。神経の流れに乗って神経節から皮膚へと移動し、帯状疱疹を引き起こすのだ。

「帯状疱疹の最初の症状は、体幹や顔など体の左右どちらかに生じる痛みです。痛みの程度は人によって違い、ピリピリ、かゆい、なんとなく痛いといった人から、ズキズキ、針で刺されたよう、焼けるよう、といった人までいます。その後、皮膚が赤くなり水疱ができます。発熱を伴う場合もあります」

 痛みの段階では、虫歯や三叉神経痛など複数の原因が考えられるので、帯状疱疹という診断はつきづらい。痛みだけなら、場所によっては様子を見る。もし胸の痛みが続く場合は心疾患の可能性もあるので内科を受診する。

■症状が出て72時間以内の治療が理想

 冒頭で「水疱が出てきたらすぐに皮膚科へ」と述べた。それは、痛みや水疱を早く治癒させるということに加え、「帯状疱疹後神経痛」という合併症のリスクを減らす重要な目的がある。帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹を発症した人の3カ月で7~25%、6カ月で5~13%の人が発症しているという報告もある。

「帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の水疱が消えて帯状疱疹が治った後も続く痛みです。衣類が触れるだけで痛い、ちょっと触っただけでも痛い、と言う人がいるほど痛みの程度が強い場合が多い」

 1~2カ月ほどで症状が落ち着く人が多いとされる一方で、3分の1の人は3カ月以上痛みが続き、5分の1は1年以上続くという統計がある。

「帯状疱疹後神経痛のリスクを低くするには、帯状疱疹の水疱が出てから理想は72時間以内に、遅くても5日以内には治療を受けるべきです」

 かつては帯状疱疹の治療薬は効き目がいいものがなかったが、今は抗ウイルス製剤で非常に良いものが出ている。

「1日1回の飲み薬で短期間で痛みや症状が取れます。高齢の方の中には、痛み止めの薬を飲むのは良くないと考えて我慢する人もいます。しかし、それは間違いです。前述の通り、痛みがあって水疱が出てきたら、痛みを我慢することなく、皮膚科を受診してください」

 帯状疱疹は発症から数カ月の間は血液が固まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなることが分かっている。その予防のためにも、帯状疱疹の治療を受けることが大切だ。

 帯状疱疹後神経痛の治療は、「リリカ」や「ガバペン」といった神経の異常興奮を抑制する抗てんかん薬や抗うつ薬などを使う。日大医学部付属板橋病院では、痛みの程度が強い帯状疱疹後神経痛の患者には、同院のペインクリニックにつなぎ、医療用の麻薬オピオイドなども用いて、痛み抑制の徹底した治療を行っている。

 帯状疱疹、ひいては帯状疱疹後神経痛の予防策は、体を疲れさせないこと。日頃から睡眠や休養をしっかり取る。

 さらに50歳以上ではワクチン接種という手がある。2016年に既存の水痘ワクチンが帯状疱疹の予防に適応拡大となり、任意接種の対象となった。20年1月には免疫機能が低下した人でも接種できる別のワクチンも発売されている。

「だいたい10年で効果が弱まるので、10年ごとに打つことを患者さんには勧めています」

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