身近な病気の正しいクスリの使い方

高血圧は薬を飲む前にまず生活習慣を見直すことが大切

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 身近な病気といえば、「高血圧」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。

 高血圧は生活習慣病の中で最も患者数の多い病気で、総患者数は1000万人以上とされています。治療を行っていない人や治療予備群を含めるとその数は膨大です。一方で、高血圧は生活習慣病の中で最も死亡率が低い疾患であることから、「治療や予防をしなければならない」という意識が低い病気の最たるものでもあるといえます。

 しかし、高血圧は重篤な心臓病を引き起こす大きなリスクとなる基礎疾患です。

 血圧が高い状態が続くと、加齢や食生活によって動脈硬化が進んだ場合は血管が裂けやすくなり、大動脈解離のような死に至る病気を招きます。ですから、「どうせ死なない」という発想はやめて、注意すべき疾患なのです。

 高血圧のおよそ9割は「本態性高血圧」と呼ばれるタイプで、いわゆる生活習慣病として明確な原因がわからないが、血圧が高くなるものです。残りは、腎臓や血管の病気やホルモンの異常、薬の副作用などによる「二次性高血圧」と呼ばれるタイプになります。

 前者は食事の塩分や運動といった生活を見直すことで改善できます。また血圧は数値を見ることができるので、改善目標を立てやすいという点も特徴です。年齢にもよりますが、140/90㎜Hg以上(家庭血圧では135/85㎜Hg以上)で高血圧となります。

 血圧を下げる治療薬はあるものの、高血圧の薬はいずれも一般薬局で買える薬ではなく、病院で処方してもらわなくてはならないので、治療には受診が必要となります。ですから、血圧が上記の値に近づいてきたときには、「まだ大丈夫」と考えるのではなく、早めに減塩など食生活や運動習慣を見直しましょう。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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