進化する糖尿病治療法

副反応の報告も それでも新型コロナワクチン打つべきか

ワクチン接種が始まったが
ワクチン接種が始まったが(代表撮影)

 新型コロナウイルスのワクチン接種がいよいよ始まりました。

 ご存じの通り、17日から医療従事者の接種が開始。3~4月くらいから重症化リスクの高い高齢者の接種が始まり、それ以降、基礎疾患のある人や高齢者施設などの従事者、次いで一般の人への接種が開始される予定です。

 優先接種の対象となる「基礎疾患のある人」とは、慢性の呼吸器の病気、慢性の心臓病(高血圧を含む)、慢性の腎臓病、慢性の肝臓病、糖尿病、血液の疾患、免疫機能が低下する病気、免疫機能を低下させる治療を受けている、睡眠時無呼吸症候群、BMI30以上の肥満など。

 糖尿病の人は、これまで繰り返しこの連載で述べている通り、感染リスクが高いわけではありません。しかし、血糖コントロールが悪ければ、重症化するリスクが高い。ですから優先接種の対象となっているわけですが、患者さんの中には、ワクチンの副反応を心配し、ワクチン接種を躊躇している人もいるかもしれません。

 もし私が、患者さんから「打つべきでしょうか?」と聞かれたら、「打つべきです」と強く勧めます。確かに、先行してワクチン接種が始まった欧米からは、副反応の報告があります。

 たとえばイギリスの発表では、先月下旬までにコロナワクチンを接種した716万人余りのうち、アナフィラキシーなどの激しいアレルギー反応があったのは114件。とはいえ、アナフィラキシーのような重篤な副反応はまれで、副反応の疑いなどとして報告のあった2万2820件の多くは腕の痛みやインフルエンザのような症状、頭痛、寒け、倦怠感、筋肉痛などで、1~2日で治ったとのこと。

 アナフィラキシーのリスクには十分に注意しなければなりませんが、コロナワクチンのメリットは、デメリットをはるかに上回ります。

■糖尿病であれば一律同時スタートで接種できるのか?

 糖尿病の人は、優先順位の対象となる基礎疾患の中の心臓病、腎臓病、肝臓病、睡眠時無呼吸症候群、肥満も併せ持っている人が多いから、なおさらです。私自身「コロナによる致死的な可能性を低くするために、糖尿病患者さんは、ぜひ早く打ってほしい」と考えていますし、同僚の医師も同じ考えの人が圧倒的に多いです。

 では、いざワクチン接種となった場合、糖尿病であれば一律同時スタートで接種できるのか? これについては、なかなか難しいとみています。

 各病院へ割り振られるワクチン数は決まっています。また、ワクチン接種に対応する病院と、そうでない病院があります。数が限られたワクチンですから、恐らくその病院に通ってきている患者さんから接種を始めるでしょう。つまり、すぐにワクチン接種できる人と、そうでない人とが出てくる可能性があります。

 もし、自分が通っている病院でワクチン接種を行っていなければ……。今の段階で言えるのは、患者さん自身がアンテナを張り巡らせて、コロナワクチンに関する情報をいち早くキャッチすること。主治医に「ワクチン接種が開始したら、どう行動すべきか」を聞いておくこと。自分の身は、自分で守るしかありません。

 ワクチン接種が始まれば重症化の不安も薄まりますが、それまでまだ数カ月あります。発症者数が多い今、コロナの感染が分かり、発熱などがあっても、すぐに入院できるとは限りません。

 糖尿病がある人は、発熱した場合、保健所などに現在の自分の血糖コントロールの状態を的確に伝えられるようにしておくべきです。

 単に「糖尿病がある」だけでは平均的な対応を取られてしまうかもしれません。同じ糖尿病でも高血圧、脂質異常症、肥満、腎臓病などを伴っているかどうか、HbA1cがどうかなどで対応が異なります。自分の状態を曖昧にしか把握できていない人は主治医に確認すると共に、糖尿病連携手帳や薬手帳が不十分であれば、それもしっかり活用できるようにしておくことをお勧めします。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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