新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、全米ではアジア系アメリカ人へのヘイトクライムが激増しています。トランプ大統領の差別的なレトリック「チャイナウイルス」という言葉が最大の原因と指摘され、これを正すための努力が始まっています。
アジア系へのヘイトクライムを防ぐために活動する非営利団体によれば、パンデミック以降、アジア系に対するヘイトクライムは報告されただけで2800件。ニューヨークでは犯罪として認められたものだけで2020年前半に20件起こり、わずか1件だった前年と比べると大きな増加となっています。
この傾向は今年に入っても続き、ニューヨークでは2月下旬にアジア系が襲われてケガを負う事件が4件連続で発生、ニューヨーク市警は専門の警官を動員するなどで対応するとしています。
この増加の最大の原因は、当時のトランプ大統領が公式の会見で新型コロナウイルスを「チャイナウイルス」と呼び続けたことにあると、専門家の研究でも明らかにされています。
一部の人たちがコロナへの怒りや憤りを中国人にぶつけようと、外見では見分けがつかないアジア系を襲っているわけですが、ヘイトクライムかどうかを認定するのは非常に難しく、地下鉄の中での嫌がらせや差別用語を含めると、相当な件数が起こっていると考えられます。筆者もパンデミックが始まった頃、ある店に入ろうとしたら閉店だと嘘をつかれ、断られる経験をしました。
もともとアメリカにはアジア系移民に対する嫌悪の歴史があり、1882年の中国人移民排斥法、第2次世界大戦中の日系アメリカ人の強制収容などが大きな引き金となっています。しかし嫌がらせや差別はあっても、過去30年の間、ここまでヘイトクライムが続くことはなかったというのが、筆者も含めたアジア系の共通した認識です。
バイデン大統領は就任直後、アジア系へのヘイトクライムを強く否定。これまで移民法で外国人を「エイリアン」と称してきたのを、「ノンシチズン(非市民)」と言い換えるなど、言葉から外国人へのネガティブなイメージを減らすための努力を始めています。
ニューヨークからお届けします。