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お酒で酔いやすくなった…病気が隠れている可能性はある?

統合内科の工藤孝文氏
統合内科の工藤孝文氏(提供写真)

「最近、お酒が飲めなくなった」「すぐに酔ってしまう」「お酒がまずくなった」「翌日に残りやすい」などと感じるようになった人もいるでしょう。加齢に伴って体の機能は徐々に衰えていきます。それはアルコールを分解する肝臓も例外ではありません。お酒に弱くなる原因の多くは、加齢によって肝臓の機能が落ち、アルコールを分解するスピードが遅くなるからです。若い頃と同じ感覚で飲んでいると、アルコールの血中濃度が高くなってしまい、お酒が残りやすくなります。

 肝臓の機能は30歳前後から低下してきますが、大量に飲酒される方は自覚するのが遅い場合もあります。いずれにしてもお酒が弱くなったと感じたら、自覚に逆らわず酒量を減らしていくのが、お酒と長く付き合えるコツでもあります。

 それでも体調不良を伴うのであれば、病気が隠れている可能性があります。たとえば、お酒が弱くなった自覚とともに、体がだるい、疲れがたまる、ムカムカする感じがいつもある――といったような自覚症状がある場合には、単に加齢の影響だけではなく、肝臓そのものの病気を疑う必要があります。ウイルス性肝炎や肝硬変、アルコール性肝炎などが隠れているケースがあり、治療をしなければ最終的に肝臓がんにつながる恐れもあります。

 胃や腸の消化器機能が低下しているときにも、お酒が弱くなります。お酒を飲むと、よく下痢をする、お腹が痛むといった症状が伴うときは、胃や腸の炎症や潰瘍が疑われます。

 また、めまい、ろれつが回りにくくなる、左手のしびれなどが伴う場合は、脳血管疾患の前兆かもしれません。アルコールが、脳の視床下部から分泌されている抗利尿ホルモンの働きを抑えてしまい、頻尿の症状をもたらします。それによって脱水症状になり脳の血流が滞る。脳に酸素が行き渡らなくなれば、脳梗塞といった脳血管疾患を発症します。

 ただし、こうした病気が隠れていても、ほとんどの方は「飲み過ぎただけ」と見逃してしまいがちです。お酒に弱くなったと感じると同時に、何か他の症状も加わるようなときは一度、医療機関を受診し、血液検査や肝臓のエコー検査を受けることをおすすめします。

▽工藤孝文(くどう・たかふみ) 内科医・糖尿病内科医・漢方医。福岡県みやま市出身。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、自身のクリニック「工藤内科」で地域医療に力を注いでいる。さまざまな医療現場で活躍するスーパードクターたちが出演の公式YouTubeチャンネル「SuperDoctors -名医のいる相談室-」でも解説します。

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