コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

スマホアプリによる「デジタル高血圧治療」臨床結果は上々

「味噌汁のスープは残す」などの治療ガイダンスも(写真はイメージ)
「味噌汁のスープは残す」などの治療ガイダンスも(写真はイメージ)

 スマホのアプリを使って高血圧症の治療を行う「デジタル高血圧治療」の開発が進められている。

 2019年12月から2020年12月にかけて国内12施設で行われた第Ⅲ相臨床試験では、主要評価項目である24時間の平均収縮期血圧で降圧効果が確認され、その詳細は学会や論文での発表が予定されている。

 自治医科大学と共同で、この「高血圧治療アプリ」を開発しているのは医療ベンチャー「CureApp(キュア・アップ)」(東京都中央区)。代表取締役社長の佐竹晃太医師が言う。

「このアプリは市販のIoT血圧計とブルートゥースで接続し、患者さんが毎日測定する血圧を自動で記録します。また、患者さん自身がアプリに生活習慣のログ(記録)や高血圧に対する認識などを入力します。すると、これらのデータを基に高血圧の要因を自動解析し、最適化された『食事』『運動』『睡眠』など個々の患者さんに合わせた行動変容を促す治療ガイダンスがアプリに通知されます。正しい生活習慣の獲得をサポートすることで、高血圧の改善に導く仕組みになっています。これらのデータは治療にあたる医師も共有できます」

 アプリは降圧薬による治療を行っていない患者や、薬の服用に抵抗感のある軽症患者を主な対象としている。

 高血圧の治療には生活習慣の改善が不可欠だが、患者の価値観、意欲、生活環境により左右されるため継続が難しく、医療機関の効果的な介入も困難だった。その「かゆいところに手が届く」のが高血圧治療アプリというわけだ。

 治療ガイダンスは、高血圧治療ガイドラインやさまざまな研究成果に基づき作成した独自のアルゴリズムによって提供される。

 たとえば「今日は味噌汁、スープの汁を飲まないようにしましょう」「20分間ウオーキングしましょう」「今日は6時間眠れるように、夜の生活を見直しましょう」などの内容がプッシュ通知で送られてくる。

「高血圧治療アプリが臨床で使われるようになれば、治療の有力な選択肢のひとつになるだけではありません。高血圧症は生活習慣病の中で最も患者数が多い疾患で、かかる医療費は年間約1.9兆円にも上ります。薬物療法の一部をアプリで代用できれば、かなり医療費が削減できると考えています」

 キュア・アップは、すでにニコチン依存症治療アプリを開発していて、昨年、デジタル療法分野では国内初の保険適用になっている。

 高血圧治療アプリは今年中には薬事承認申請を行い、来年以降の保険適用を目指しているという。

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