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線虫がん検査<上>検体解析装置の完全自動化で実用化が可能に

検体解析装置
検体解析装置(HIROTSUバイオサイエンス提供)

 病気を見つける検査にはさまざまな人工機器が用いられているが、一方で、生物の持つ驚異的な能力を生かして病気を見つける「生物診断」という検査法の実用化が始まっている。

 生物診断の研究開発、製造販売を行うバイオベンチャー「HIROTSUバイオサイエンス」(東京都千代田区)は、開発した「線虫がん検査(N―NOSE)」の検体解析装置を完全自動化させたことで、2カ所の検査センターで月間約3万件の検査の処理ができる体制となっている。

「線虫」とは、線形動物門に属する動物の総称で、回虫、ぎょう虫、アニサキスなど1億種以上いるとされる。線虫のどのような能力によって、がんを発見するのか。同社・事業本部長の久保田陽一取締役が言う。

「N―NOSEでは体長約1ミリ、色は透明な『シー・エレガンス』という種類の線虫を用いています。目や耳はなく、においを頼りに生きている線虫は、機械では検知できないほどかすかなにおいを嗅ぎ分けることができます。そしてがん患者の尿に含まれるがん特有のにおいを高い確率で検知することが研究によって明らかになりました」

 においをキャッチする嗅覚受容体様遺伝子(センサー)は、人間では約400種類、嗅覚に優れていることで知られる犬が約800種類、シー・エレガンスは、さらに多い約1200種類を持っているという。

 このようにN―NOSEは、受検者の尿でがんのリスクを調べる「がんの1次スクリーニング検査」になる。具体的には、シャーレ(容器)の中央に50~100匹の線虫を配置し、シャーレの片側に希釈した尿を置く。30分間静置させ、線虫の行動を解析する。これを同一の尿で複数回繰り返し検査する。

 これまで手作業で行っていた工程の完全自動化に成功したことで、線虫がん検査の実用化が可能になったわけだ。

「線虫が反応することが分かっているがん種は、胃、大腸、肺、乳、膵臓(すいぞう)、肝臓、前立腺など15種類の固形がんで、1度の検査で全身のがんリスクを調べることが可能です。検査の精度は臨床研究において、感度86.3%という結果を得ています。ステージ0や1の早期がんでも高い感度で反応します」

 次回は同社が全国展開を始める、自宅にいながら線虫がん検査が受けられる新サービス「N―NOSEathome」を紹介する。

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