名医が答える病気と体の悩み

耳がものすごく痛い…どんな病気が考えられるでしょうか?

脳神経外科医の鮫島哲朗氏
脳神経外科医の鮫島哲朗氏(提供写真)

 一口に「耳が痛い」と言っても、「お腹が痛い」と言うのと同じで、原因がたくさんあります。なぜなら耳には、顔面神経や三叉神経、迷走神経、舌咽神経といったたくさんの神経がつながってネットワークを形成しているからです。

 最も一般的な原因は、口の中のばい菌が耳管を通って引き起こす「中耳炎」、耳かきのやりすぎなどが原因の「外耳炎」といった耳の炎症や鼓膜損傷などの外傷ですから、まずは耳鼻科に行って診察してもらいましょう。

 また顎関節症や頭皮に湿疹を伴う帯状疱疹なども痛みが耳の周囲に放散し、耳痛を訴えることがあります。

 私たち脳神経外科を耳痛で受診される患者さんの多くは、「後頭神経痛」と呼ばれるものです。耳の裏がズキンズキンと針で突き刺されたような強い痛みが突然起こり、和らいだり、痛かったりを繰り返すなら、その可能性があります。後頭神経の線維が耳の後ろにも分布するためで、天候や気圧の変わりやすい季節の深夜から朝方にかけて発症しやすくなります。痛みには波がありますが、大人の方でも、泣きながら外来にいらっしゃるほどの激痛が走ることがあります。

 また「三叉神経痛」でも痛みが耳に放散することがあります。これは脳幹近くの三叉神経を血管が圧迫して起こるためで、脳外科手術が有効です。

 さらに、痛みのみならず耳の奥が詰まった感覚や聞こえが悪くなった、顔が麻痺してきたなどの多彩な症状を伴う場合は、「脳腫瘍」や「頭頚部がん」が原因であるケースも考えられます。

 大きな病気が隠れている可能性があるので、耳の痛みは安易に放置せず病院で診察してもらいましょう。

▽鮫島哲朗(さめしま・てつろう)宮崎県出身。1990年3月宮崎医科大学(現宮崎大学)医学部卒業後、同脳神経外科入局。2002年4月に米国Duke大学脳神経外科、10年2月にNTT東日本関東病院脳神経外科主任医長を務め、13年4月から浜松医科大学脳神経外科勤務。

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