科学が証明!ストレス解消法

1時間怒り続けると残業6時間分相当の精神力を消耗する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 イライラしてしまうことは良くないことだとわかっていても、ついついささいなことで腹が立ってしまう――。そんな人は多いのではないでしょうか? 怒りを無理に抑えようとすると、かえってストレスになりかねません。だからイライラそのものを我慢する必要はありませんが、ささいなことで腹を立ててしまう人は注意が必要です。

「イライラしすぎると免疫が下がってしまう」とは、ロンドン大学で博士号を取得しているグレンらの実験結果(1995年)です。彼らは、健康状態の17~50歳の男女30人を集め、戦争のシーンなど負の感情を喚起させる映像を見せました。その結果、特にIgA(免疫グロブリンA)など消化器系や尿路の病原体と深く関係を持つ免疫が下がり、心理テストでも気分障害を起こす人が多かったそうです。

 対して、マザー・テレサの活動など心が落ち着く映像を見せたところ、被験者の免疫系機能が増加したといいます。このように聞くと、なるべく心が温まるような映像を見ることが望ましいように思えますが、もっと効果的な方法があると、同実験は明らかにしています。

 被験者に5分間、気遣いや思いやりのある行動を取ってもらうと、なんと彼らのIgAレベルが平均41%増加したのです。1時間後にはIgAレベルは正常に戻るのですが、その後、約6時間にわたって再び徐々に増加。つまり、マザー・テレサの映像を見るよりも、自らが気遣いや思いやりを持った行動をした方が効果があったのです。

 たしかに、困っている人を助けるなどの向社会的行動をすると、後々までいい気分に包まれますよね。実は、そういった高揚感が、心身に良い影響をもたらしていると示唆されているんです。

 一方、怒りや反骨心を、あえてエネルギーに変える人もいると思います。ですが、単に怒っているだけではパワーに変えることは難しいでしょう。大切なのは、「なぜこの怒りは湧き上がるのか?」「世間を見返したい!そのためには何が必要か?」など、理知的かつ客観的に思考するマインドです。

 論理的に考えれば、脳のリソースは、怒りによって反応していた扁桃体から、理性をつかさどる前頭葉へと移動します。すると徐々に怒りも静まり、冷静さを取り戻していきます。実は、怒りを原動力にしている人は、このような冷静な判断や思考を伴っているケースが多く、ただただ怒るばかりでは免疫力を下げてしまうだけなのです。

 1時間怒り続けたときに消耗する体力や精神力は、残業6時間分に相当するともいわれています。高血圧症、消化性潰瘍などを引き起こす可能性もあるそうですから、怒れば怒るほど心身には良くないのです。

 状況や物事がうまくいかないときこそ、ボランティアなど向社会的行動をしてみてはいかがでしょう? イライラを減退させるだけでなく、新たな気づきを発見できる機会になるかもしれませんよ。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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