災害時に困らない!慌てない! 用意すべき健康災害グッズ

2020年7月の熊本豪雨
2020年7月の熊本豪雨(C)共同通信社

 近年、大型台風や集中豪雨による水災の被害が増えている。かつては、マンションの高層部は水害とは無縁と考えられていたが、ベランダの排水能力を超えて水がたまり、部屋に浸水してくるケースも報告されている。水害に限らず、何らかの自然災害に見舞われた時、健康を守る上で、準備しておくべきことは何か? 医師で、健康経営のクラウドサービスを提供する「リバランス」代表の池井佑丞氏に聞いた。

 糖尿病や高血圧など何らかの基礎疾患があって薬を服用している人が、何をおいてもやるべきなのは「お薬手帳」の確認だ。

 持っていない人は、受診している医療機関で受け取った処方箋を薬局に持参すれば、作ってもらえる。

「スマホのアプリにお薬手帳を入れるという手もあります。ただ、災害時は充電できずにスマホを見ることができないことも。アプリと紙のお薬手帳の両方を用意しておくと安心です。お薬手帳は、災害時に限らず、外出時は常に携帯する習慣を身に付けてください」

「常に」というのは、外出時に災害に遭い、そのまま避難所へ……といったケースもあるからだ。東日本大震災の直後は、自宅に帰れなかったり、交通網のまひでかかりつけの病院に行けなかったりで、「普段飲んでいる薬が手元にない」という人が数多く出た。医療機関や薬局も、電源などが断たれ、患者の薬歴をパソコンで閲覧することもできなくなった。

 しかし、お薬手帳があれば、いつも飲んでいる薬を正確に確認できる。緊急時には処方箋がなくても薬を処方してもらえるケースもある。

「最近はジェネリック医薬品(後発医薬品)も多く、製品名だけではうまく伝わらないこともあります。患者さんによって複数の薬を併用している場合もありますし、禁忌の飲み合わせもあります。薬は適切な使い方をしてこそ、安全かつ効果的に使用することができます。だからこそのお薬手帳なのです」

 複数のクリニックにかかっていると、お薬手帳が何冊もある、ということも。薬局に持っていけば1冊に最新の情報を集約して記載してくれるので平時にやっておくべきだ。高齢者では、お薬手帳のコピーをその家族も持参しておくといい。

 喘息のように、「普段飲む薬」とは別に「発作が出た時に飲む薬」がある場合、「発作が出た時に飲む薬」は普段は飲んでいないため、気がつけば有効期限が切れていたというケースがある。

「ストレスが高まる上、慣れない環境で過ごさなければならなくなる災害時は、発作が出やすくなります。いざという時のために、有効期限を定期的に確認すべきです」

 糖尿病の治療薬インスリン(未使用)は2~8度の冷蔵保存。暑いところに置いておくと効果が弱まる可能性もある。薬の普段の保管方法によっては、保冷バッグの準備も忘れてはいけない。

■歯ブラシセットに追加したいもの

 基礎疾患がない人では何が必要か?

「一般的な救急箱は、いつでも持って避難できるようにしておくことを強くお勧めします」

 家族に高齢者がいるなら、救急箱には歯ブラシも加え、口腔洗浄液も必須。避難所では、抵抗力が弱い高齢者の誤嚥性肺炎のリスクが高まる。その予防になるのが口腔ケアだが、水が不十分で歯磨きがうまくできないこともあり、口腔洗浄液が役立つ。

 女性では、生理用品も忘れずに。

「災害時に生理用品がなくて困ったという話はよく聞きます。基本的に1周期分は用意しておくべきです」

 医療情報や、災害に見舞われた時どうするかなど、インターネットで調べてプリントアウトしたものを救急箱に入れておくのも大事と、池井氏は言う。私たちは普段、分からないことがあればネットで調べることに慣れているが、災害時はネットを使えない可能性が高い。必要な情報を紙で読めるようにしておく。

 備えあれば憂いなしだ。

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