新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各国政府は感染対策の一環としてマスクの着用を推奨してきました。日本でもマスク着用は外出時のマナーやルールのようになりつつあります。
スポーツジムなどで運動をする際にもマスクを着用している人は多いでしょう。
近年では通気性に優れたスポーツ用の布マスクも販売されているようです。しかし、マスクの着用が運動パフォーマンスにどのような影響を与えるかについては詳しく分かっていませんでした。そんな中、布マスク着用による運動への影響を検討した研究論文が、スポーツ医学の専門誌に2021年4月13日付で掲載されました。
この研究では、米国在住の健常者31人(平均23・2歳)が対象となりました。被験者は布マスク(22×11センチ、ポリエステル88%、ポリウレタン12%の布による2層構造)を着用してランニングマシンを用いた運動をするグループと、布マスクを着用しないで運動するグループにランダムに分け、運動時間(疲労するまでの時間)や最大酸素摂取量を比較しました。
最大酸素摂取量とは人が摂取できる1分当たりの酸素量の最大値で、この値が大きいほど強度の高い運動を、より長く行うことができます。
解析の結果、布マスクを着用しない場合に比べ、着用して運動すると運動時間が14%短縮、最大酸素摂取量が29%低下しました。つまり、布マスクを着用していると運動パフォーマンスが低下するという結果です。
この研究ではまた、布マスクを着用している間、被験者は息苦しさや閉塞感に伴う恐怖心を感じたと報告されています。論文著者らは、布マスクを装着する際には運動の頻度や時間、また運動の強度や種類の変更を検討すべきと結論しています。
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