筋トレ後30分以内に「牛乳」を飲むと筋肉量が効率良く増える

軽い負荷でも回数を増やす
軽い負荷でも回数を増やす(C)PIXTA

 高齢者の筋肉量の低下は、身体機能障害、転倒、寝たきりのリスクを上げ、寿命に影響する。また、海外の研究では筋肉量が少ないと、糖尿病の発症リスクや心疾患による死亡リスクが上昇するとの結果が出ている。では、筋肉量を効率良く増やすポイントは? 立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授に聞いた。

●高齢者は、必須アミノ酸の中でも特にロイシンを多めに取る

 筋肉量を増やすには、タンパク質の摂取が必須。食事に含まれるタンパク質は体内でアミノ酸に分解され、筋肉の合成に使われる。ただし、アミノ酸の種類によって筋肉の合成度合いが違う。

「20種類すべてのアミノ酸を取ると、摂取1~2時間後には安静時の2倍程度まで筋肉の合成が高まります。一方、アミノ酸20種類を取った群と、体内で合成できない必須アミノ酸9種類だけを取った群とで比較すると、筋肉の合成速度に差がないという研究結果が出ています」

 これは、筋肉合成のスイッチを入れるのが必須アミノ酸であることを示している。スイッチが入らないと、アミノ酸が体内にあっても筋肉がつくられない。この必須アミノ酸の中でも特に重要なのが、ロイシンだ。

「細胞内のセストリン2というタンパク質がロイシンの濃度を感知すると、筋肉のシグナル経路mTORC1(エムトール)が活性化し、筋肉の合成が高まります」

 このロイシン、高齢者ほど意識して摂取したい。なぜなら、加齢でロイシンへの抵抗性が増すからだ。高齢者を2群に分け、必須アミノ酸だけを取った群と、必須アミノ酸の中でもロイシンの量を全体の40%まで引き上げて摂取した群とを比較した研究では、ロイシンが多い群の方が筋肉の合成速度が上がった。

 ロイシンは、牛乳やチーズなど乳製品に多く含まれている。

●高齢者は体重1キロ当たり1.2グラムのタンパク質摂取を目指す

 タンパク質の1日の摂取量は、体重1キロ当たり約1グラムが目安といわれる。しかし欧米では「高齢者はもっと取る必要あり」としており、体重1キロ当たり1~1.2グラムが高齢者の推奨量だ。体重50キロなら、タンパク質60グラムを目指したい。

●朝のタンパク質摂取量を増やす

「タンパク質は蓄積できないので毎日、毎食取らなくてはなりません。しかし夜が過剰で、朝昼のタンパク質摂取は不十分という報告があります」

 大学生対象の研究で、どちらの群も同じだけの筋トレをし、同じ量のタンパク質を摂取。しかし一方は朝のタンパク質量を多く、もう一方は夜のタンパク質量を多く取った。3カ月後に比較すると、朝のタンパク質量が多い群の方が筋肉量が増していた。

「さまざまな理由で食品から十分なタンパク質の摂取が難しい場合は、ホエイプロテイン(牛乳由来のタンパク質)やアミノ酸のサプリメントを活用するのも手段のひとつです。特に高齢者は食欲が低下しがちなので、サプリの活用は有効です」

●筋トレを行う

 運動とタンパク質摂取を組み合わせると、より効率的に筋肉を増やしたり維持したりできる。運動では、有酸素運動より筋トレの方が筋肉量アップにつながる。

「1回の筋トレで、タンパク質の合成速度が安静時の2倍になり、徐々に下がるものの、効果は2日間続きます。食事では数時間しか筋肉の合成が続きません。同じタンパク質の摂取量でも、筋トレをした方が筋肉の合成が高まる。これは年齢に関係ありません」

 ロイシンを筋トレ後に取った方が筋肉量が増すことも、研究で分かっている。筋トレ後30分以内の摂取が理想だ。

「筋トレは、軽い負荷でも回数を増やせばOK。自宅でできるスクワットや腕立て伏せで、筋肉を大きく強くできます」

 今日から始めよう。

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