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王の果実パイナップルは食前に取ると消化器系障害に効果あり

パイナップルには消化を助けてくれる酵素が含まれている
パイナップルには消化を助けてくれる酵素が含まれている

 果実の形が松かさに似ていて、味がリンゴのように甘いので、「パイン(松の実)アップル(リンゴ=価値のあるおいしい果実)」と呼ばれるパイナップル。日本でパイナップルの栽培が本格的に始まったのは1930年ごろです。明治・大正時代には英語を直訳して「松リンゴ」と呼ばれていたこともあるそうです。

 世界中に広まったきっかけは、なんとコロンブス! カトリック両王へ献上したところ、「王の果実」として称賛を受け、国王の富と権力の象徴とされ普及していったそうです。フィリピンや台湾などで栽培されるようになったのはごく最近のこと。缶詰の製造が盛んになったことから、大量生産されるようになりました。

 そんなパイナップルですが、100グラム当たりのエネルギーは51キロカロリーと比較的低エネルギーといえます。ただし、糖質量は缶詰のパイナップルは生の約2倍、砂糖漬けにしてある缶詰は生の約8倍というものもあるので、糖質量を特に気にされる方は生食をおすすめします。

 また、生パイナップルを食べすぎると舌が痛くなった経験はないでしょうか。これはブロメラインというタンパク質分解酵素が舌上のタンパク質を分解したためです。でも、悪いことだけではありません。ブロメラインは胃液の分泌を促してタンパク質の消化を助けてくれる働きや、胃腸の炎症を鎮めたり腸内の有害物質を分解する作用など、消化器系障害にも効果があると報告されているのです。

 ブロメラインが体内で先回りして消化を促してくれるため、食前に食べるのもおすすめ! この性質を利用して、肉や魚を軟らかくすることもできます。ただし、60度以上に熱すると効果がなくなるので、加熱処理した缶詰などではNG。加熱する前に果汁に漬け込むのがいいでしょう。

 その他、風邪の予防に効果的なビタミンC、糖質を分解する酵素を助け、エネルギーに変えてくれるビタミンB1、整腸作用のある食物繊維、貧血予防に役立つ鉄や酵素を活性化してくれるマグネシウムも含まれています。

 古くなると、おしりからカビが生えたり、軟らかくなりすぎるので、押してみて弾力を感じるパイナップルを選ぶといいでしょう。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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