科学が証明!ストレス解消法

温泉と同様の効果がある「手浴」でストレスをデトックス

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 東京を筆頭に、首都圏や都市圏における新型コロナウイルス感染拡大が深刻な状況になっています。オリンピックやパラリンピック、大リーグで活躍する大谷翔平選手など明るいニュースがあるにもかかわらず、どこか陰鬱とした気持ちになってしまう――。そんな人は多いのではないでしょうか?

 こういうときはどこか旅行に出掛けたり、温泉につかったりしてリフレッシュしたいところですが、現在の状況を鑑みれば大きな移動は控えなければいけません。ガス抜きすらままならない……。これではますますストレスはたまる一方です。だからこそ、日頃から適度にストレスを解消させ、気持ちをリラックスさせることが、とても重要だと思われます。

 誰でも簡単に、かつ場所を選ばないストレス軽減方法として、ぜひ覚えておいてほしいのが「手浴」です。北海道大学の矢野らが、脳血管障害の患者を対象にした研究(2009年)によると、38度の温水に10~15分ほど手首をつけて手を温めると、患者の痛みが緩和されたり、爽快感が増加したり、ポジティブな言葉を発するようになったり、病気の回復に対する「やる気」が向上したと報告されています。

 人間の体では、指、手のひら、前腕に、温かさを感じる「温点」が最も集中しています。また、手の血管には、交感神経支配が集中しています。寒いときにストーブやたき火に手をかざすと、体も心もぽかぽかになるのは、手の温めがこれらの神経に作用し、さまざまな効果を生むからなのです。

 手浴は医療現場から生まれたもので、お風呂に入れない患者さんにも、お風呂につかることと同様の効果や感覚を覚えてもらうために実践されています。ストレスはもちろん、疲れや焦燥感を感じたときは、手浴でリラックスするようにしてみてください。

 もちろん、近くに温泉がある人は、温泉での気持ちのリセットも効果的です。札幌市立高等専門学校の渡部が北海道大学の研究者らと行った実験では、8人の女性に10分間入浴してもらい(入浴前後30分間の安静も取ってもらった)、脳波、心拍数、体温、皮膚温、質問紙を用いてその効果を測定しました。

 その結果、脳波解析においては「悲しみ」が低下し、「気分の良さ」や「リラックス感」が増加。また、普段よりよく眠れ、翌日にやる気や集中力が上がるという傾向も見られました。

 十分な休息は、とても大事。そして、日頃からリラックスできる生活習慣を持つことが望ましい。温泉につかる、そして温泉に劣らない効果ともいわれている手浴といったアクションは、とても身近なストレス軽減方法です。

 “日常使いできるガス抜き”を、どれだけ知っているか、それを実践しているかによって、ストレスの蓄積度や集中力、気持ちの浮き沈みは変わってきます。気持ちが落ち込んでしまうのは、人間である以上仕方がない。だからこそ大切なのは、気持ちをリカバリーしたり、ショックを軽減したりするためのストレス緩和術なのです。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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