進化する糖尿病治療法

1週間具だくさんアレンジスープで飽きずにおいしく認知症対策

さまざまな食品をバランス良く取ることが大事
さまざまな食品をバランス良く取ることが大事(C)日刊ゲンダイ

 さまざまな食材を取ろうと意識することは、結果的に栄養バランスの良い食事を実現させます。それが、認知機能の維持に役立ち、脳の萎縮を抑制します。国立長寿医療研究センターが行った老化に関する長期横断疫学研究で、それが示されています。

 1997年に開始されたその研究では、「魚をよく食べ、魚に多く含まれる不飽和脂肪酸の一種DHAの血中濃度が高い人」「乳製品に多い短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸の摂取量が多い人」「緑茶を1日1杯以上飲んでいる人」「アミノ酸摂取量が多い人」は、認知機能が保持されるという結果が出ています。

 認知機能との関連が強かった食品で、着目すべきは穀類です。穀類の摂取量が多い人ほど認知機能低下リスクが上昇していたのです。さらに調べると、お米と認知機能との関連は確認されませんでしたが、うどんやそうめんなど小麦ベースの穀類摂取量が多い人ほど、認知機能が低下しやすいことが分かりました。

 お米は、さまざまなおかずと食べるが、うどんやそうめんは、おかずなしで食べることがよくある。

 それが、認知機能低下に関係しているのでは――。研究者が「食の多様性」について調べると、やはりさまざまな食品群をバランスよく食べている人ほど、認知機能が低下しにくいとの結果でした。

 これについて、研究者は「さまざまな食品群をバランス良く食べている人は栄養学的にも良い食生活の上、そういう食事を取るには『献立を考える』『食材を用意する』『料理する、または購入する』ことが必要。これらが認知機能に良い影響を与えているのではないか」と考察しています。

■さまざまな食材を食べている人はボケにくい

 認知症予防があるエビデンス(科学的根拠)のある食事として、地中海食があります。

 イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国の人々が食べている伝統的な料理のことで、「季節折々の野菜や果物を豊富に使用する」「オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う」「乳製品や魚をよく使う」「食事の時に赤ワインを適量飲む」「赤身肉の摂取頻度や摂取量が少ない」などが特徴。

 そして、先の国立長寿医療研究センターの研究結果、「さまざまな食品群をバランス良く食べる」も、この地中海食に見られるポイントなんですね。

 ちょっとの工夫で、食事内容を変えられます。一人暮らし歴が長い50代の男性は、一度にたくさんの食材、特に野菜やキノコ類を取れるように、土日に具だくさんのスープを仕込むんだそうです。これを1週間いろいろとアレンジして食べる。

 例えば月曜日は、豚バラ肉とキャベツ、ニンジン、大根、タマネギなどその時々で安く売っていた野菜、キノコ類、豆腐などで塩味のスープにする。火曜日は、料理酒や水を足して味を薄め、味噌を溶いて豚汁風に。

 水曜日は、豆乳を足してクリーミーなスープに。野菜が足りなくなってきたら、その都度、手でちぎったり、料理バサミで切れるような野菜を追加する。

 木曜日は、トマトやトマト缶を投入、味がガラリと変化して飽きない。そして金曜日は、カレールーを入れてカレーに。

 野菜は加熱すれば一度にたくさん取れる。スープは豚肉、鶏肉、牛肉、何でも合いますし、サバ缶やイワシ缶を入れてもいい。

 この男性は、「1週間具だくさんアレンジスープ」で野菜不足を補うように努めているとか。納豆や卵、豆腐、料理が面倒なら市販の総菜を何品か付ければ、立派な定食になります。

 糖尿病の人は認知症になりやすいことが分かっています。認知症対策の食の“改革”を始めてもらえればと思います。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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