9月2日時点で、WHOが「注目すべき変異株(VOI)」に指定した変異株は5種類。南米のコロンビアで最初に報告された最も新しい変異株は「ミュー株」と名付けられた。果たして次々と出現するウイルスに従来のワクチンはどこまで効くのか?
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【Q】ミュー株はデルタ株よりも強力? 従来のワクチンで対応できるのか?
【A】「ミュー株は今年初めて確認されて以来、コロンビアのほか、エクアドルでも増加傾向にあります。E484Kという変異がウイルスのスパイクタンパクに出現したものですが、あまり多くのデータがなく、今後はさらに研究が必要です。現在、WHOはイータ、カッパ、ラムダ、ミューなどを警戒しています。これらはデルタと同様、ワクチン効果を低下させたから、自然免疫の回避可能性が高いと予想されるため、注目されていますが、2度のワクチン接種で重症化は防げると考えています」
一方で「ミュー株」については東大や東海大などの研究チームの報告でもワクチンなどでできた抗体がほかの変異株よりも効きにくく、従来の7分の1以下と評価している。
【Q】シンガポールは国民の8割がワクチン接種を終えたが、新たな感染者が増えているため、60歳以上の人などを対象に3回目のワクチン接種が始まった。なぜ感染が拡大したのか?
【A】「2020年8月以来の高水準で新規感染者数が増えています。これは外食の解禁などによる人の接触が増えたことによるブレークスルー感染によるものが大半であると思われます。しかし、ワクチン接種完了後に感染するもののうち、重症化に至る割合は1%未満で、未接種者の約6%に比べて極めて低い、とシンガポール政府はワクチンの効果を強調しています。今後も抗体や細胞性免疫などをスルーする新たな変異株が出現しない可能性が全くないわけではありません。最終的には、現在開発しているカクテル療法や新しく発売される抗ウイルス剤などが普及するまでは完全に防げないでしょう」
【Q】ファイザーのワクチンは接種後半年で抗体が4分の1になると報告されているが…
【A】「抗体価が4分の1になって再感染が起こっても、その確率は13分の1という論文データがあります。抗体価が下がっても死ぬリスクはないのかといえば、リスクはあります。接種後時間を経て、抗体価が5分の1や10分の1になってくると、やはり再感染率も上がる。そこで欧米では3度目のワクチンを打つ国が増えています。3度目になると2度目の4、5倍の抗体価を得られるため、安心できるだろうという考えです」
【Q】ワクチンの効果について、肥満や飲酒量によって違いはある?
【A】「ファイザーやモデルナは肥満の人に効果が薄いと言われています。肥満の人は免疫系が全体的に発現しにくくなっていることが多いというデータがあります。そもそも肥満の人とやせた人では、同じ分量のワクチンを打った場合の効果は違います。100キロの人と日本人に多いやせ形の40~50キロの人では、効き目が半分以下になるのは当然。また子どもには3分の1の量にするなど、体形に合わせて医師が判断していかなければいけないと思います。嗜好品の影響もあります。宇都宮病院研究チームの調査では、たばこを吸う人は吸ってない人と比べて抗体価が35%低かったことを報告しました。さらに、千葉大学病院がファイザー製ワクチンを接種した職員1774人の抗体を調べたところ、毎日お酒を飲む人は、そうでない人に比べて抗体の総量が約20%少ないという結果を発表しています」
ただし週2~3回程度の飲酒であれば、まったく飲まない人とほとんど差がなかったという。