進化する糖尿病治療法

小太り中年がコロナを機にスポーツジム通いが習慣化した理由

写真はイメージ
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 在宅勤務が中心となり活動量が激減した人もいれば、運動を習慣化できた人もいます。食品メーカーに勤務する東京都内在住のY太さん(50)も、その一人。

 小中高と野球をしていましたが、大学では野球はやめ、テニスやスキーを時々するイベントサークルに所属。就職後はテニス、スキーすらしなくなり、自宅と会社の往復の日々。営業職で、会食も多かったので、30歳を越えるころには15キロ以上太り、「小太り」の域に入っていました。

 今から5年前、45歳の時、血糖値、血圧、中性脂肪の数値が高めなのをなんとかしようと、大手スポーツジムに入会。ところが典型的な幽霊会員で、1年後に退会。

 半年のブランクを経て、パーソナルトレーニングメインのジムに入り、週1回通っていたものの、仕事が忙しくなり約2年で退会してしまいました。

 その後は、思い立った時にジョギングや腹筋をしていましたが、習慣というところまではいっていませんでした。

 そんな中、コロナで仕事が在宅メインになり、会食がなくなり、友人と会うこともなくなりました。

「俺、今日一日、オンラインでしか人と話していないな」

 昨年末、朝から晩までオンライン会議を何本もこなし、一息ついている時、ふとそう思ったそうです。

 会社からは「しばらく在宅勤務で」と言われているので、オンラインでしか人と話さない状況はこれからも続くことは間違いありません。独身なので、オンラインでのやりとりがなければ、それこそだれとも話さない。実際、年末年始はコロナの影響で帰省をしなかったので、休みの間中、テレビ相手に笑ったり、ツッコミを入れたりする日々だったそうです。

 年を明けてからはご存じの通り、東京都はアルコールの提供禁止と提供時間短縮が繰り返されています。

 飲食店も休業に入るところが少なくなく、Y太さんの行きつけの飲食店も同様。より一層、顔を合わせての会話が減ってしまいました。

 そこで、考えたのがスポーツジム。きっかけは、同じく在宅勤務メインの友人の「最近は、ジム仲間としかリアルで話していない」という言葉でした。

■会食多く飲み屋に通っていた日々から一変

「ジムで感染するかも、って心配じゃないのか?」と聞くと、友人は「自分が行っているところは、トレーナーやスタッフが使った用具やロッカールームを頻繁にアルコール消毒しているし、会員も神経質にアルコール消毒をしている。マスク着用が義務付けられているし、時間帯によっては、利用者も少なく、しかも顔ぶれはほぼ同じメンバー」といいます。

 Y太さんもネットなどで調べてみると、この1年、スポーツジムでのクラスター発生のニュースが見つからず、それなら自分も始めてみようとすぐに入会しました。挫折しないようにと、選んだジムはグループレッスンが多数あるところです。

 ほぼ毎日、通っているのは朝7時から始まる40分間のレッスン。これなら、ジムまでの電車はすいており、レッスンを終えてシャワーを浴びて帰宅しても、9時の仕事始めに間に合う。早朝のジム利用者は少なく、同じメンバーなのですぐに顔見知りになり、言葉を交わすようになりました。

「挨拶を交わしたり、『あのコーチのレッスン分かりやすいよね』といった程度で、大した会話はしていません。でも、それでもいいんです。顔を合わせて話ができる時間が1日に5分でもあるだけで、気分が全然違う」(Y太さん)

 最初は朝起きるのがつらかったそうですが、2週間続ければ、すっかり習慣化。ジムが休みの日も自然と同じ時間に目が覚めるようになったとのことです。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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