前回、百日咳とマクロライド系抗菌薬について取り上げました。今回はマクロライド系抗菌薬について少し詳しくお話しします。
マクロライド系抗菌薬は、放線菌が産生する抗生物質で、ペニシリンに続き肺炎の主要な原因菌である肺炎球菌に効果を示す抗菌薬として開発されました。ペニシリン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬が効果を示さないマイコプラズマやクラミジアといった肺炎の病原体にも効果を示すため、2000年当時、マクロライド系抗菌薬は肺炎の第1選択薬として頻用されていました。
また、マクロライド系抗菌薬に抗炎症作用も発見されたことで、日本では汎細気管支炎などの呼吸器領域疾患や耳鼻科領域の慢性炎症性疾患にも、マクロライド少量長期療法が多く用いられるようになりました。
このような状況でマクロライド系抗菌薬の使用量はどんどん増加し、日本ではその使用割合が他国に比べて高く、抗菌薬選択の約3割を占めています。
そんな中、懸念されているのが「耐性菌」の問題。マクロライド系抗菌薬が効かない菌が非常に増えてきているのです。もともと効果があったはずの肺炎球菌の耐性状況は、欧米が20~30%であるのに対し日本では70~80%に上ります。肺炎マイコプラズマにおいても、日本では80%以上が耐性を示しているというデータも報告されています。
いまでもマクロライド系抗菌薬は、臨床現場では長引く咳に対してついつい出されていたり、漫然と処方が継続されている症例をよく見かけます。
しかし、マクロライド系抗菌薬だけでなく、同一の抗菌薬を長期間投与し続けることは、耐性菌が増加する原因になるケースもあります。感染性心内膜炎など抗菌薬の長期間投与が必要な特定の疾患以外の場合は注意が必要です。14日以上、長期に同じ抗菌薬が処方されている人は、その理由を医師や薬剤師に確認してみてください。
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