病気を近づけない体のメンテナンス

首<上>肩こりを引き起こす首姿勢を正す10秒エクササイズ

肩こり解消のカギは「首の姿勢」にある
肩こり解消のカギは「首の姿勢」にある

 いつも「肩こりに悩まされている」という人は少なくないはず。マッサージを受けると気持ちはいいが、治るわけではなく、またすぐにぶり返す。なぜなら「こり」は筋肉が長時間、緊張すれば自然と再び生じるものだから。マッサージ、鍼灸、電気治療など、手法は違っても、どれも血行を一時的によくするための対症療法でしかないのだ。

 20年前に国内初の「枕外来」を開設した「16号整形外科」(神奈川県相模原市)の山田朱織院長が言う。

「肩こり解消のカギを握っているのは、実は肩ではありません。どうしても痛みやこりの部位に目を向けがちですが、原因は『首の姿勢』なのです。私が首の姿勢の大切さを訴えるのには理由があります。それは、首の姿勢を整えるだけで、一見、首に関係ないと思われているさまざまな体の不調まで治ってしまうことがあるからです」

 首にとって悪い姿勢が続くと、首回りの筋肉が緊張し、首回りの筋肉をつかさどる神経が圧迫され、痛みを感じるようになる。

 そして慢性化すれば、血管が締め付けられ血液循環が悪くなる。すると組織に栄養や酸素が行かなくなり、痛みやこりを起こす原因物質の「乳酸」がどんどんたまる悪循環を起こすのだ。

 また、首の骨(頚椎)は、「体軸」の役割を果たしている背骨の一部。その頚椎の間には「椎間孔」という隙間があり、脊髄神経から枝分かれした頚神経が頭部、顔面、首、肩、腕、手などに伸びている。首の筋肉の緊張によって頚神経が圧迫されると、首や肩の張り・こり・痛みだけでなく、「眼精疲労」「頭痛」「目まい」「耳鳴り」「歯の違和感」など、さまざまな症状が出ることもあるのだ。

「マッサージなどの『他動的』な対策は、自分の体が根本的に変わった状態とは言えません。他人の力を借りて、局所的に血流がよくなったに過ぎないのです。首のこりから解放されるには、『自動的』であることが大切です。つまり、『首回りの筋肉にできるだけ緊張状態を与えない』生活環境を自分で整えながら、自分自身の体の内側から変えていかなければいけないのです」

 そのために最も大切なのは「意識して首姿勢をよくする」こと。首の骨は「背骨=体軸」の一部であり、体軸の中で最も不安定なところになる。首姿勢を整えるということは、「体軸」を整えることになるのだ。

 山田院長が勧める「顎が出る」「背中が丸い(猫背)」「お腹が前に出る」の悪い立ち姿勢を直す「体軸を整える10秒エクササイズ」は次のようなもの。重力に対して安定した位置に体軸を戻すようなイメージで行う。

■立っているときに行う首姿勢エクササイズ

 まず、肩幅ぐらいに足を開いて立つ。次に、目の高さと同じ高さのものを見て、顔を正面に向ける。

 さらに、軽く顎を引く。5度くらい頭の角度を変え、目線は10度くらい落とすイメージ。これで少し首が曲がっている状態になる。

 次に、胸を起こして両肩を開く。これで首の位置が決まる。そして、おヘソの上を締めるイメージで、お腹を引っ込める。これで腰の位置が決まる。最後にお尻の穴をクッと締めて完成。

 この状態が、首がニュートラルポジションになり、「体軸」にとって理想的な状態になる。まずは一日に朝昼晩の3回やって、理想的な首姿勢を身につけていく。

■座っているときに行う首姿勢エクササイズ

 足裏をピッタリつけられるよう、座面の高さを調節する。

 ももの付け根からひざ頭が10度下がっている姿勢にする。これで、ひざの高さが決まる。そこから、骨盤と骨盤の間にある「仙骨」という骨を、座面と背もたれの角にしっかり当てる。

 そして、背もたれと背中の隙間(腰の反っている部分)にクッションを入れる。

 最後に軽く顎を引いて、胸を張って、おヘソの上を締めるイメージでお腹を引っ込め、お尻を締める。

 立ち姿勢にしても、座り姿勢にしても、「胸を開いて、おヘソの上をクッと引っ込ませる」ことがポイントになる。また、エクササイズを行っているときに息を止めてしまうと、体の筋肉が硬直して首を痛めやすくなる。行うときは息をしながら体を動かすことが大切だ。

 次回は、睡眠中に首姿勢に負担をかけない快眠法を紹介してもらう。

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