時間栄養学と旬の食材

コノシロはカルシウムの吸収がアップする夜に食べたい

コノシロ
コノシロ

 江戸前寿司に代表されるコハダ。コノシロの出世魚で、成長に応じて呼び名が変わります。関東では、5~6センチをシンコ(新子)、7~10センチをコハダ、12~14センチをナカズミ、それ以上をコノシロ(鰶、鮗)と呼び、関西ではコノシロの幼魚をツナシ(鯯)とも呼びます。

 コノシロの名前の由来は、人を焼く臭いに似ているといわれていた魚をひつぎに詰めて焼き、いけにえになるはずだった子供を救ったことから「子の代わり」=「子の代」と呼ぶようになった説、大量に取れることからご飯の代わりになるので「飯代魚(コノシロ)」と呼ぶようになった説など、諸説あります。

 また、酢漬けが多く、焼くことが少ないのは、独特の臭い以外に「この城」を焼くという表現を武士が忌み嫌ったからという話もあります。さらに、江戸の武士は「この城」を食うという表現も嫌がったので、多少大きくてもコハダと呼んで食べていたそうです。

 小ぶりのものほど皮が軟らかく、身がふっくら。コノシロサイズになると皮は硬くなり、小骨も多くなってしまうので、小さい方が価格は高くなります。一般的に20センチを超えたものは安価に取引されますが、成魚のほうがコノシロ本来のうま味はどんどん増えていくので焼いたり、煮たり、酢漬けにしたりすることでおいしく食べることができます。

 栄養価についてはどうでしょうか。食品成分表には、コノシロの栄養価表記しか載っておらず、出世するにあたっての栄養価の変化を見ることはできません。そのため、今回はコノシロの栄養価から考えていくことにしましょう。

 コノシロの脂質は悪玉コレステロールを低下させる働きがあるオレイン酸が主となり、オメガ3系のDHA、EPAもわずかに含まれます。青魚ほどDHA、EPAは多くなく、ビタミン類で特に多いものはありません。ミネラル類ではカルシウムと鉄が豊富です。

 コノシロは小骨が多い魚なので、骨まで一緒に食べることでカルシウム摂取量がアップ! カルシウムは夜の方が吸収率が上がると報告されていますので、DHA、EPA、ビタミンが少ないことを考えても、夜向きの食材と言えるでしょう。

 スーパーなどでは目にする機会が少ないコノシロですが、見つけた時にはぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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