感染症別 正しいクスリの使い方

【インフルエンザ】子供には使わない方がいい解熱剤がある

写真はイメージ
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 インフルエンザの治療薬といえば「タミフル」(一般名オセルタミビル)をイメージする方が多いのではないでしょうか。

 かつて、このタミフルを服用した10代の患者さんがベランダから飛び降りたり、踏切に飛び込んだりするなどの異常行動が社会問題となりました。タミフルの添付文書も、10代への使用を「原則として差し控える」と2007年に改訂されました。

 しかしその後、厚労省研究班の調査報告において、「インフルエンザ罹患時には薬の種類や服用の有無に関係なく異常行動が発現する」という事実が報告され、18年に10代への使用制限は解除されました。現在では、これら異常行動はインフルエンザ自体が原因であったと広く考えられるようになっています。

 異常行動は「インフルエンザ脳症」でも起こります。これはインフルエンザに伴って起こる脳の炎症で、主に小児に多く発症が見られます。主な症状は、意識障害、けいれん、異常な言動・行動の3つです。

 インフルエンザでは高熱が出るため、解熱剤を用いることが多いと思いますが、小児では注意が必要です。「ジクロフェナクナトリウム」など一部の解熱剤は、インフルエンザ脳症発症時の死亡率を高めることが知られているのです。

 また、「アスピリン」の使用も要注意です。

 小児においてアスピリンを使用した場合、ライ症候群の発症を高めることがわかっています。ライ症候群とは、インフルエンザや水ぼうそうなどのウイルス疾患に続発し、急性脳症や肝臓の脂肪浸潤を引き起こす原因不明の病態です。ライ症候群が起こることはまれですが、一度発症すると症状が重くなりやすく、死に至る例もあります。

 小児におけるインフルエンザの解熱には、「アセトアミノフェン」が安心して使える薬です。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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