コロナ第6波に備える最新知識

接種開始から11カ月 ワクチン先進国イスラエルの現状は?

ワクチンのみでは防げない
ワクチンのみでは防げない(C)ロイター

 イスラエルが国を挙げて新型コロナワクチン接種を始めて11カ月が過ぎた。新型コロナの1日の新規感染者数はどう推移したのか?

 昨年9月下旬に9000人を超えた同国では12月19日からワクチン接種を開始した。

 新型コロナの新規感染者数は1月半ばに1万人を超えた。その後はワクチンの2回接種の本格化とともに頭打ちになり3月に入り減少に転じた。しかし感染力の強いデルタ株の世界的な広がりとともに6月から再び増え始め、8月下旬に1万人超えに。8月1日から始まった3回目の接種の影響か、その後しばらくして減少に向かった。

 この間、ワクチン接種者数は増え続けている。イスラエルにおける年齢別の接種スケジュールは、医療従事者などの優先接種対象を除き、60歳以上は今年1月中旬、40~59歳は2月中旬、16~39歳は3月初旬に、それぞれ2回目接種が開始された。

 12月の接種開始から2月9日までには360万人超が1回目接種を終えた。そのうち220万人以上が2回目接種も完了。年代別に見た2回目接種完了率は70歳以上(84.3%)、60~69歳(69.0%)、50~59歳(50.2%)、50歳未満(9.9%)。

 では、2月時点でのワクチン効果はどう考えられていたのか?

 2月下旬には世界的権威のある医学雑誌「ニューイングランドジャーナル誌」に2020年12月20日~2021年2月1日にワクチン接種を受けた約60万人と、年齢・性別や居住環境、併存疾患の数などの背景を一致させたワクチン未接種者約60万人のその後の新型コロナウイルス感染症の状況を調査した結果が報告されている。

 それによると、ワクチン接種することにより、PCR陽性者を92%、軽症を94%、入院を87%、重症を92%抑えることができた、という。

 その後も同国ではワクチン接種がどんどん進み、7月27日には国民の57%にあたる532万人が2回目接種を完了した。

 ところがより感染力の強いデルタ株が登場、新規感染者の95%を占めたため6月下旬には新たに12~15歳へのワクチン接種が推奨された。

 同国保健省の調査・分析によれば、その時点のファイザー製ワクチンは、入院88%、重症化91%を抑えられたものの、感染防止効果は39%、軽症抑止効果は41%とした。調査はデルタ株の感染拡大が認識された6月以降のデータに基づいて行われた。

■早期完了者ほど感染が広がる

 別の研究では6月1日以前にワクチンを接種した群を対象に7月11~31日の研究期間にどれだけ新型コロナに感染し、死亡を含む重症化したか、その発生率を検討した。

 感染率では60代以上の1月接種完了群は、3月群に比べて1.6倍、40~59歳の2月完了群は、4月群の1.7倍、16~39歳の3月完了群は5月群の1.6倍多かった。重症化率は60歳以上の1月接種完了群は3月群に対して1.8倍、40~59歳の2月完了群は3月群に対して2.2倍それぞれ高かった。

 これらを根拠に同国では8月1日から60歳以上に対し、3回目接種(ブースター接種)がスタート。現在、人口の4割超にあたる400万人が3回目接種を終えている。

 それでも、最近では1日の新規感染者数は増加傾向にあり、とくに10代以下が目立つことから11月23日から5~11歳への接種を開始。しかも、新規感染者の1割近くが3回目接種完了者で、デルタ株以上に強力な変異株が南アで見つかったことなどから政府内からは「4回目接種は不可避」との声が上がっている。

 ちなみに11月22日時点の同国の新型コロナによる死者と新規感染者は22人と452人。同日の日本のそれ(2人、50人)を大幅に上回っている。

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