病気を近づけない体のメンテナンス

血管<上>若々しく保つための3つのポイント 食事がカギを握る

フルーツは朝食で食べるのがいい
フルーツは朝食で食べるのがいい

 最新の医学では「血管こそが健康のカギを握る」という考えに変わってきている。血管が脳や心臓、肝臓、腎臓、骨、肌など、すべての臓器や器官に酸素や栄養を取り込んだ血液を送り、正しく機能させるベースとなるからだ。

 そのような考えから言えば、柔らかくてしなやかな血管を維持できれば、脳梗塞や認知症、がんなども含め、ほとんどの生活習慣病のリスクを軽減できるということになる。では、勢いのいい血流を生み出す若々しい血管とは、どんな血管なのか。「ズボラでもラクラク!血管・血流がよみがえって全部よくなる!」(三笠書房)の著者で、「芝浦スリーワンクリニック」(東京都港区)の板倉弘重名誉院長(認定臨床栄養指導医)が言う。

「人間の血管(動脈・静脈)は『内膜』『中膜』『外膜』の3層構造になっていて、中膜には『平滑筋』という筋肉があります。この平滑筋が、心臓から押し出された血液を先へ先へと送るポンプの役割を果たしています。つまり、健康な血管とは、平滑筋がしなやかに動く柔らかい血管のことです。しかし、血管内皮に起こる『炎症』と『コブ』という2つの原因により、血管は少しずつ弾力を失って硬くなっていきます。これが血管の老化です」

 メタボや生活習慣病などがあると、血管の内皮細胞が炎症を起こす。そして炎症が慢性化すると、その部分にカルシウムが沈着して血管内膜の石灰化が始まり、血管は硬くなり、ひび割れたりボロボロと崩れやすくなったりする。また、炎症によって血管内皮が傷つくと、そこから悪玉コレステロールが入り込み、コブ(プラーク)ができて動脈硬化が起こる。コブ自体はブヨブヨして硬くはないが、コブの下の血管内膜や中膜が硬くなるのだ。

 この血管老化(硬くなる)の現象も初期段階であれば、「食品に含まれる抗酸化物質」や「運動による血管内皮のNO(一酸化窒素)の産生」により、改善することが分かっているという。しかし、いったんカルシウムの沈着が進んで石灰化してしまうと、元に戻すことは困難になる。

■高血糖が最大の原因

 その予防のためにも、まずは血液と血管を健全に保つ食事を日常的に心がけることが大切だ。食事のポイントは次の3つに集約できるという。

①糖質、塩分、中性脂肪の摂取量を減らす

②良質のポリフェノールをたっぷり取る

③コラーゲン(動物性タンパク質)とビタミンCをしっかり取る

 ①は、血液中に糖質、塩分、中性脂肪が多いと、血管内皮に炎症が起こりやすいから。特に糖質と塩分を意識して減らすことが重要になる。

「血管を老化させる一番の原因は高血糖です。血糖値を上げるのは、スナック菓子、清涼飲料水、フルーツ、炭水化物といった糖質が多い食事ですが、要注意なのはフルーツです。フルーツの甘味成分である果糖やブドウ糖は、他の糖質より素早く吸収されます。ですから、食べるタイミングは『朝食のとき』がいいのです。エネルギー消費の少ない寝る前や、空腹時にいきなり食べると急激に血糖値を上げてしまうのです」

 塩分は、現在の日本人は1日11~14グラム取っている。厚労省は1日の摂取量の基準を、男性7.5グラム、女性6.5グラム、高血圧や慢性腎臓病の人は6グラム未満としている。食事のときは、絶えず「減塩」という意識を持つことが大切になる。

 ②のポリフェノールは抗酸化作用で炎症を抑える働きを助ける。ポリフェノールは赤ワインに多く含まれることがよく知られているが、その15倍以上含まれるのがカカオ分70%以上の「高(ハイ)カカオチョコレート」。通常、5グラムずつ包装されているので、1日5個、合計25グラムを食べるといいという。

 ③のコラーゲン(動物性タンパク質)とビタミンCは、血管内膜を作る素材になる。そして免疫細胞のひとつであるリンパ球の素材となるのもコラーゲン。免疫力を上げ、血液をきれいにすることは血管の健康を守ることにつながる。厚労省は動物性タンパク質の1日の摂取量の目標を、体重1キロ当たり1グラムに設定している。

「食べたコラーゲンは、いったん体内でアミノ酸に分解され、ビタミンCや鉄分を使ってコラーゲンに再構築されます。しかし、ビタミンCは体内にためておくことができないので、毎日取る必要があります。ただし、ビタミンCは熱に弱いので、野菜にレモン果汁をしぼるなどして生で食べるようにしてください」

 次回は「運動によるNO産生」を取り上げる。

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