医者も知らない医学の新常識

白内障の手術で認知症を予防できる? 米内科専門誌で報告

写真はイメージ
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 認知症の有効な予防法は「健康な生活習慣」などやや抽象的なものしかなく、不安を抱えている中高年の方も多いと思います。

 日々の脳のトレーニングもたしかに少しは有効なのかもしれませんが、毎日楽しくもないパズルやゲームをするのも、あまり長続きはしない人が多いのではないでしょうか?

 老化により衰えるのは脳ばかりではありません。目や耳などの感覚も、早い時期から老化によって影響を受ける器官の代表です。脳は目や耳からの情報を処理して機能している場所ですから、その情報が入りにくい状態になると、脳が正常に機能しなくなるのは当然のようにも思います。

 実際に視力の低下や難聴が、その後の認知症の発症と関連があるというデータも報告されています。それでは、衰えた視力が回復すると、それは脳にも良い影響を与えるのでしょうか?

 今年の米国医師会の内科専門誌に、白内障の手術と認知症との関連を検証した研究結果が発表されました。

 アメリカで3000人以上の認知症のない白内障の高齢者を、手術した場合とそうでない場合に分けて観察したところ、手術をして視力が改善した方が3割近く、その後の認知症が予防されていたのです。この効果は同じ目の手術でも、視力に関係のない緑内障の手術では認められませんでした。

 白内障の手術は、認知症の予防効果も期待できるのかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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