受験生の食事術

風邪をひかないために何を食べたらいいか ビタミンをしっかり摂る

玄米や豚肉に含まれるビタミンB1が減ると感染症にかかりやすくなる恐れが…
玄米や豚肉に含まれるビタミンB1が減ると感染症にかかりやすくなる恐れが…

 新型コロナウイルスの蔓延が長引いて久しく、それとともに「免疫力」という言葉を聞く機会も増えています。そもそも免疫力とは、「疫(病気)を免れる力」のことです。

 免疫は一度病気にかかったら二度と同じ病気にかからない、あるいは抵抗ができる生体反応のこと。ウイルスや細菌といった体にとっての異物が体内に侵入すると、侵入してきたウイルスや細菌から体を守ろうとするのです。つまり、免疫力が低くなると、風邪などにかかりやすくなってしまうので、受験生にとって免疫力を維持し、高めることはとても重要になってきます。

 では、どのような食事を摂れば免疫力が高まるのでしょうか?

 まず、免疫機能を担う細胞(免疫細胞)を活性化させるために必要な栄養素を摂ることが大切です。ひとつ目が肉、魚、大豆、乳製品などのタンパク質。私たちの身体は約37兆個の細胞で出来ていて、免疫細胞もそのひとつです。タンパク質は私たちの身体を作ってくれる“もと”になる栄養素ですから、もちろん免疫細胞の働きもアップしてくれます。

 最近の研究では、腸の「パイエル板」には、免疫細胞に体に有害な異物を学習させ、その情報を血液に乗せて体中に行きわたらせて病原菌やウイルスを攻撃する働きがみられること。そして、このパイエル板にある免疫細胞の維持に玄米や豚肉に含まれるビタミンB1が深く関わっていることがわかっています。ビタミンB1が減るとパイエル板は小さくなってしまい、生体の防御機能が弱くなるので感染症にかかりやすくなる恐れがあるというわけです。

 また、ウナギやニンジンに含まれるビタミンAは、ウイルスや細菌を食べてくれる白血球の増加に関わりますし、ホウレン草やブロッコリーに含まれるビタミンEは免疫細胞を直接活性化してくれるので非常に重要です。果物などに含まれ抗酸化作用のあるビタミンCは、ビタミンEの吸収を高めてくれるので一緒に摂るとよいでしょう。トマトやホウレン草といった緑黄色野菜などに含まれ、体の中でビタミンAに変わるβカロテンもぜひ摂りたい栄養素です。さらに、イワシやアジなどの青魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸は、炎症を抑えたり、免疫調節を促すとも報告されています。

■腸内環境を整える栄養素も大切

 先ほどのパイエル板もですが、最近、免疫力と腸の関係に深い関わりがあることが明らかになってきて、注目を集めています。腸は、口から食べた食べ物を細かく消化して吸収してくれるところなのですが、同時にウイルスや細菌などが侵入してくるリスクが高い場所でもあります。そのため、腸の壁の内側には免疫細胞がたくさん存在していて、なんと体中の免疫細胞の約7割が腸に集まっているとも言われています。ということは、腸内環境を整えることもまた、免疫力を高めるきっかけになるのです。ヨーグルトなどの発酵食品、野菜などに多く含まれる食物繊維、オリゴ糖などの栄養素は、腸内環境を整えてくれます。

 さまざまな成分が免疫力アップのために効果があることがわかりました。ただし、腸内環境も免疫細胞の働きも、個人差があるのも事実です。そのため、特定の食品を食べれば確実に免疫力が高まるというわけでもなく、ある人に効果があったからといって、自分にも確実に効果があるとも限りません。

 とはいえ、免疫力を高める効果のある栄養素を意識することは決して悪いことではありません。免疫力を高める食事を意識しながら献立を立てると、結果として栄養バランスの整った食事に繋がっていくからです。バランスの取れた食事、そして規則正しい生活を心がけて受験本番に臨んでいきましょう。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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