オミクロン株は本当に脅威なのか? 統計から見えてくる新型コロナの実態

死亡者数は減少している
死亡者数は減少している(C)日刊ゲンダイ
医療情報学の専門家が特別投稿

 年が明けた途端、新型コロナウイルスの感染が再び急拡大し、第6波の到来と騒がれている。しかも今回は新顔のオミクロン株が中心とあって、政府や医療界が警戒を強めている。

 WHO(世界保健機関)は、オミクロン株による重症化リスクは、デルタ株と比較して低い可能性があると言っている。しかし同時に、オミクロン株は風邪ではない、軽い病気と考えるべきではないとも言っており、見解が定まらない。

 こういうとき、統計を眺めてみると、全体的な傾向が見えてくることがある。

 そこでまず、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計(COVID-19 Dashboard)をのぞいてみよう。すると世界全体の感染者数と死亡数の推移は表①のようになっていた。つまり、世界的に見ると、12月に入ってから感染者数が増加に転じ、とくに年明けから爆発的に増加していることが分かる。ところが死亡数は逆に減少している。

 日本に限った動きも、だいたい同じである(表②)。年末から感染者数が増え始め、年明けに一気に増えてきた。だが死亡数は増えていない。1月3日の週で見れば致死率は0.03%になる。

 しかし感染者数が急増しているため、まん延防止等重点措置を申請する自治体が増えている。今後、さらに緊急事態宣言が発令される可能性もある。だが、それが正しい対処法か、疑問が残る。

■21年の死亡数急増は行動自粛の影響か

 厚生労働省の人口動態調査によれば、2020年は19年と比較して、死亡数が9000人減っている。マスク、手洗いなどのほか、行動自粛や店舗の営業自粛などが影響して、インフルエンザや普通の肺炎が激減したためである。ところが21年に入ってから死亡数が急増し、7月までに前年同期比で約4万5000人も増加した。また、国立感染症研究所の「日本の超過および過少死亡数ダッシュボード」でも、21年1月から9月までの、新型コロナの直接死を除いた超過死亡数は、最大で4万1606人と推定されている。実死亡数も超過死亡数も大幅に増えているが、それは主に循環器疾患によるものである。

 これについて、専門家らは「新型コロナによる医療の逼迫が影響した可能性がある」と言っている。だが、医療が本当に逼迫した地域はごく限られていたし、それで新型コロナの死者数の数倍も超過死亡数を出したとは考えにくい。

 それよりも、国民に対する行動自粛要請などの影響が大きかったのではないだろうか。

 高齢者の中には、感染を恐れて必要な通院まで自粛する人が大勢いた。そうでなくても、行動自粛は運動不足やストレスの増加を招いた。2020年の間はまだ気が張っていたが、21年に入って、ついに無理が表面化してきた可能性がある。自殺者がかなり増えたことも気にかかる。

 行動制限を限定的に抑えたスウェーデンは、感染拡大直後こそ実死亡数も超過死亡数も大きく上がったが、その後は低水準で推移し、21年に入ってからは超過死亡数がほとんどゼロの状態が続いている。オミクロン株が最初に発生した南アフリカは死亡数がほとんど増えないまま、ほぼピークアウトした。

 日本の政府や自治体は、そういうことも参考にしながら、冷静かつ現実的な対応を進めてほしいものである。

(長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授・永田宏)

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