感染爆発のオミクロン株 空気感染を考慮して換気の徹底が重要

冬は感染力がアップする
冬は感染力がアップする(C)日刊ゲンダイ

 猛威を振るうオミクロン株の流行により、新型コロナウイルスの感染爆発はまだまだ収まりそうにない。1月20日に8638人の感染者が確認された東京都では翌21日からまん延防止等重点措置が適用されたが、日常生活における感染対策をあらためて徹底したい。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。

 オミクロン株は「感染力が強く、重症化リスクは低い」と言われる。コロナウイルスの細胞侵入に関わるスパイクタンパク質が30以上変異している上に免疫逃避能力もあり、従来株と比べ気道での増殖力が70倍で、感染力は4~5倍だと推測されている。

 一方、肺への侵入は10分の1程度なことから、間質性肺炎を起こすケースは少なく、50~90%程度が無症状か軽症とされる。米ロサンゼルスの感染者約7万人を対象とした研究では、デルタ株に比べて症状が出る人は50%程度、ICU入院は74%少なく、死亡は91%少ないと報告されている。

 だからといって軽く考えるのは禁物だという。

「世界では1日におよそ400万人が感染し、1万人が死亡しています。致死率は約0.25%です。西欧でも、10万人当たり数十人から200人前後の死亡があり、致死率は0.05~0.2%になります。季節性インフルエンザの致死率は関連死を含めて0.1%、直接死は0.03%程度ですから、オミクロン株の死亡リスクが低いとはいえません。日本ではまだ死亡者は多くありませんが、感染者数が増えれば、それだけ重症者も死亡者も増えます。また、コロナ患者で医療機関が手いっぱいになり、他の重篤な病気の患者が切り捨てられる危険もある。実際、米国の循環器科教授からの私信では、ボストンの大学病院で診ているのはコロナ患者ばかりだと悲鳴を上げていて、脳卒中や心筋梗塞などの緊急性のある患者が犠牲になっているといいます」

 だからこそ、感染対策を徹底することが大切になる。感染力が強いオミクロン株で何より意識しなければならないポイントは「空気感染する」ということだ。

「世界的な医科学誌の『ネイチャー』や『ランセット』でも、感染流行の半年後から、飛沫、接触、そして空気が感染経路であると報告しています。会話、咳、くしゃみなどで鼻や口から排出された飛沫は、空気中で水分が蒸発して乾燥し、飛沫核という微粒子(5ミクロン以下)になって、数メートル以上にわたり空中を漂います。この飛沫核に含まれたウイルスが鼻や口から侵入し、感染させるのが空気感染(飛沫核感染)です。空気が乾燥する冬には、より細かい粒子となって長時間漂う上、ウイルスの生存力が桁違いに上がるため、さらに感染リスクがアップします」

■マスクだけでは不十分

 これまで報告された国内外の感染事例を見ると、飛沫と空気による感染によって、ごく近くで大声で話すとマスクの有無にかかわらず、1分以内に感染する可能性がある。

 換気が悪い室内では、人と人の距離を1メートル以上あけ、アクリル板で間を仕切っても、飛沫核が室内を循環すれば1人がその場にいる全員にウイルスをまき散らす。

「感染対策としてマスクの着用は重要ですが、空気感染を考慮するとそこまで安心はできません。東大医科学研究所の研究では、不織布マスクをしている場合、50センチ離れた時に排出するコロナウイルスが70%以上減り、飛沫や飛沫核で侵入するウイルス量を47%以上減らせる効果があるとしています。逆に言えば、50%以上はウイルスの侵入は防げないということです。95%以上の微粒子を捕捉できると称されるN95マスクでも、完全密着でなければ、ウイルスの10%は侵入するとされています」

 マスクをしていても空気感染は十分に予防できないとなると、重要なのは、やはり「換気」だ。

「室内を長時間漂う飛沫核を屋外に排出する必要があります。WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病対策センター)の報告では、換気が1時間に2回以下になると、ウイルスの拡散に有意な関連があるとしています。ですから、換気は1時間に2回以上の頻度で行うのが望ましい。個室や仕切られた場所で、適切な換気が徹底されていれば、別のグループへの感染リスクはほぼなくなります」

 換気は部屋の対角線上にある窓やドアを開けると、空気の流れができて効率がいい。

「外気を取り入れながら、エアコン、扇風機、空気清浄機を使って換気を補助するのも効果的です。温かい空気は部屋の上、冷たい空気は下にたまります。扇風機や空気清浄機の風向きを斜め上方向にして空気を拡散するといいでしょう」

 3回目のワクチン接種が遅れている現状も考え、マスク着用、ソーシャルディスタンス、換気をあらためて徹底すべきだ。

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