役に立つオモシロ医学論文

コロナワクチンの副反応 5~7割が「ノセボ効果」によるもの?

その副反応は「ノセボ効果」の影響かも…
その副反応は「ノセボ効果」の影響かも…

 薬として効く成分がまったく含まれていない偽薬を「プラセボ」と呼びます。プラセボを飲んでも、理論上は何の効果も期待できませんが、実際には身体に有益な作用が得られることも多く、これがプラセボ効果です。

 しかし、プラセボによってもたらされる効果は有益な作用だけとは限りません。プラセボを飲んでいるにもかかわらず、本物の薬と同じような副作用が表れることをノセボ効果と呼びます。新型コロナウイルスワクチンの接種にあたり、副反応を心配される方は多いと思います。同ワクチンの副反応は接種部位の痛み、発熱、頭痛、倦怠感など、その症状の多くは軽いものです。しかし、副反応に対する不安が強いと、ノセボ効果の影響によって副反応が強まる可能性もあります。

 新型コロナウイルスワクチンの副反応とノセボ効果の影響を検討した研究論文が、米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナルに2022年1月4日付で掲載されました。

 この研究では、新型コロナウイルスワクチンの有効性や安全性について、プラセボワクチン(生理食塩水など)と比較した12件の臨床試験データが解析対象となりました。

 臨床試験に参加した被験者のうち、2万2802人が新型コロナウイルスワクチンを、2万2578人がプラセボワクチンを接種していました。

 解析の結果、プラセボワクチンを接種したにもかかわらず、何らかの副反応を報告した人は、初回の接種で35.2%、2回目の接種で31.8%でした。この頻度をもとに新型コロナウイルスワクチンによるノセボ効果の影響を検討したところ、新型コロナウイルスワクチンによる全ての副反応のうち、初回の接種で76%、2回目の接種で52%がノセボ効果に相当すると見積もられました。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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