東洋医学を正しく知って不調改善

西洋医学では病気と診断されない「未病」とはなんだ?

黄帝内経霊枢
黄帝内経霊枢(C)日刊ゲンダイ

 東洋医学では昔から未病という考え方があります。読んで字の通り、「未だ病まず」ですから、まだ病気になっていない状態を言い表しています。

 なんとなく調子が良くないからと病院で検査をしたけど、異常なしと言われた──こんな経験はありませんでしょうか? 数値や検査画像などで異常が見つからなければ、西洋医学では病気と診断されません。

 だったら治療する必要がない? いえいえ、東洋医学ではそうはなりません。まだ発病していないだけで、体のバランスが崩れ、病気に向かっている状態と捉え、そんな病気の芽を未然に摘む(治す)ことが東洋医学ではもっとも大切なことと考えるのです。

 およそ2000年前にまとめられた東洋医学の原典「黄帝内経」に、「上工は未病を治し、已病を治さず」とあります。この言葉は「上等な医療者(上工)は、病気になる前に、その兆候を見いだして治療をする。病気が起こることを未然に対処する」ということです。東洋医学では、体のバランスの乱れ、機能の不調を鋭く察知し、症状がひどくなる前や病気になる前に治療を施していくことを最良と考えているのです。

山中直樹氏
山中直樹氏(提供写真)

 西洋医学では「病気でなければ健康であり、健康でなければ病気である」といった二つに一つの二元的健康観があるのに対し、東洋医学では一元的健康観があります。健康のレベルは高い状態から低い状態まで段階的にあり、それが低下すると病気に至るというものです。

 実は、「未病」が日本で広く浸透したのは、近年になってから。きっかけとなったのが、1997年度版の「厚生白書」で「未病」という言葉が初めて取り上げられたためでした。未病が注目された背景としては、この頃から生活習慣病や心の病といった、生活を送る中で徐々に病んでいく人が増加したことが挙げられます。

 それら生活習慣病に対する予防医学への関心が高まり、この未病という東洋医学的な考え方が見直され、近頃では辞書にもこの未病が掲載されるまでになっています。

 軽いうちに異常を見つけて病気を予防する未病は、高齢化社会を迎えた日本においてこれからますます重要になっていくことでしょう。

山中直樹

山中直樹

日本医学柔整鍼灸専門学校 柔道整復学科 専任教員。健康長寿・認知症 Gold-QPD 実践セミナー地域フロンティア代表 。健康長寿・認知症 Gold-QPD 実践セミナー講師。鍼灸師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師。

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