科学が証明!ストレス解消法

騒音はストレスレベルを上げるが、雑音は想像力を向上させる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 騒音の激しい場所にいるとイライラしてしまいます。集中できなくなるだけではなく、驚くことに、「騒音の大きい場所に住むと太る」というスウェーデンのカロリンスカ医科大のエリクソンらの研究(2014年)があります。

 5156人を対象に、騒音と肥満の関係性を統計的に調べたところ、空港、鉄道、大きな幹線道路などの近くに住む人は、相対的に体脂肪の量が多かったそうです。

 個人差もあるでしょうが、女性だけで言えば、騒音が5デシベル上がるごとにウエストが1.51センチ増えることも数字上で明らかになったといいます。

 騒音の刺激を受けると、ストレスによってコルチゾール、すなわちストレスホルモンが分泌されます。ですからコルチゾールが増えることで食欲は増え、睡眠の質も下がります。当然、太りやすくなってしまうわけですね。

 そのため、音が激しい場所、たとえばカラオケボックスやゲームセンターなどでストレスを発散したい場合は、気分転換と自分で思える程度がいいでしょう。付き合わされて、騒音に聞こえるようだったら黄信号。また、過剰なコルチゾールの分泌は、プランニングや論理分析に関与する脳の前頭前野の働きを阻害するともいわれています。音がうるさくて集中力が欠けてしまうのは、こういった理由からなんですね。

 一方で、雑音が数多く意識に入ってくるということは、それだけ多くの情報を脳が処理しているといわれ、創造性を与えるという指摘もあります。

 私たちは情報が入る際に、「感覚情報のゲーティング」と呼ばれる、情報の取捨選択を自動的に見分けてフィルタリングしています。情報のフィルタリングに“漏れ”が多い人は、一般平均よりも広い範囲から雑音を含めた刺激を受け取ってしまうといいます。雑音を拾ってしまう人は、本来であればフィルタリングされ、シャットアウトされるかもしれなかった情報に気が付くため、創造性豊かな人物になりえる可能性があるのです。

 イリノイ大学のミータらの研究(12年)によると、比較的静かな環境(50デシベル/書店の店内や役所の窓口周辺など)よりも、適度な周囲の雑音(70デシベル/コーヒーショップの店内、ファミレスの店内など)、たとえばカフェなどの場所のほうが創造性を求められる仕事においては被験者たちのパフォーマンスを向上させたという報告もあります。

 ただし、騒音に近い雑音(85デシベル/パチンコ店内やゲームセンター内など)においてはパフォーマンスが低下してしまうという結果も明らかになっています。

 むしろ、あまり雑音を気にせず仕事がはかどるという方は、人よりもいろいろな情報が入ってくるため、結果的にそれらを結合して、とんでもないアイデアを思いついたりすることができる--といった可能性を秘めています。

 少し賑やかな場所で仕事をしたいという方は、雑音以上、騒音未満こそ創造力を向上させストレスにならない空間といえるでしょう。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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