進化する糖尿病治療法

薬や治療に対する質問は大歓迎 事前にメモしておけばスムーズ

写真はイメージ
写真はイメージ

 患者さんの中には、「先生の言うことに反論してはいけない」と思っている方がいます。「薬を変更したいと言うと嫌がられるのではないか」「質問をすると怒られるのではないか」と、言葉をのみ込んでいる方はかなりいるのではないでしょうか。

 結論から述べますと、しっかりと病気の知識を持っている患者さんからの意見や質問に、「生意気な!」「面倒な患者だな」などと思う医師は、昔ならいざ知らず、ごく少数派です(ゼロとは言えないところがつらいところですが……)。

 特に内科や整形外科など患者数が多い診療科では、どうしても診察にかける時間が短くなってしまいます。患者さんが何を不安に思っているのか、現在の治療がベストなのか、主要な訴え以外に不調はないのかなど、いろいろ知りたいのですが、時間が許しません。

 私の専門の糖尿病・内分泌領域で言えば、さまざまな合併症リスクがありますから、血糖コントロールだけでなく、体全体の状態について把握しておきたい。糖尿病が進行し、目や神経などの疾患も進行しているケースもあるからです。

 また、糖尿病は一見無関係な疾患にも影響を与えています。例えば、糖尿病は五十肩にも関係しています。肩の動きに関連している腱板の損傷部分の血流が悪くなり、五十肩を起こしやすく、治りにくいのです。歯周病も、糖尿病治療がうまくいっていないと治りが悪い。そういう情報を患者さんや、各疾患の担当医と共有できれば、よりスムーズに治療が進むでしょう。

 しかしいかんせん、現状では不可能。結果、「特に問題ありません」「調子は変わりありません」と患者さんに言われると、「では、今のままで様子を見ましょう」となりがちなのです。

 短い診療時間を最大限に有効に使うために、患者さん側で疑問や希望などがあれば、医師にストレートに伝える。そのためには、正しい病気の知識をしっかりと持つことが不可欠です。病気の知識が全くないままに「なんかよくわからないんですけど」と頭に浮かぶままに疑問をぶつけたり、インターネットの不確かな情報をもとに「薬をやめたい」などと訴えるのは、有効な時間の使い方とは言えません。

 薬に関しては、「薬の数が多くて飲み忘れてしまう」「もっと使いやすい薬はないのか」「新薬が出たと聞いたけど、自分の場合、どうなのか」など、患者さんの意見、大歓迎です。

 専門医の間でよく言われるのですが、糖尿病の治療薬は10年前と現在では浦島太郎ほど状況が違う。今は血糖コントロールだけが目的ではなく、腎臓や心臓の数値のコントロールも視野に入れて、薬を選んでいく時代です。

 そして、糖尿病に関連する高血圧や脂質異常症に関する薬は、どんどん新しいものが出ています。高血圧や動脈硬化は治療のガイドラインが何年かに1回の改定ですが、糖尿病は、アメリカも日本も毎年改定版が出ています。それほどめまぐるしく薬の新しい作用が研究で解明され、治療方針が更新されているのです。必ずしも新薬が良いというわけではないですが、コストパフォーマンスも考えて処方されるべきでしょう。

 医師への疑問や希望の上手な伝え方ですが、診療時間が限られているため、あらかじめメモにまとめておくといいですよ。慌てず、的確に伝えられると思います。受け付けの時に、質問したい内容を書いたメモを看護師に渡しておくという方法もあります。

 医療機関や医師との関係性によって異なるものの、看護師に「先生に聞きたいことがあるんですけど、どうするのが一番いいですか?」などと聞くのもいいでしょう。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

関連記事