コロナ感染が下降を続けるアメリカでは、各州でマスク義務付け規制が緩和されてきています。そんな中で改めて問題になっているのはコロナ後遺症ですが、症状の一つである味覚・嗅覚障害の原因を明らかにする論文が発表され、注目を集めています。
コロナに感染した人の3~7割が一時的に失うとされる味覚と嗅覚。数カ月から1年経っても完全に戻らない人もいます。その原因はウイルスに対する免疫反応から起こる炎症であるという論文が医学雑誌セルに発表されました。
コロナ後遺症である味覚・嗅覚異常は、味やにおいを感知し脳に伝達する細胞レセプターにウイルスが感染することで、伝達機能が失われるのではないかという仮説がこれまで出されていました。
しかし、ニューヨークのコロンビア大学とニューヨーク大学の研究チームはそれを否定。両大学の研究によると、ウイルスは嗅覚系ニューロンをサポートする細胞に感染。これらの細胞が感染で死ぬと大量の炎症性分子サイトカインを送り出し、その信号がニューロンに送られます。嗅覚がなくなるのは、その信号が神経細胞の機能および鼻腔の奥深くにある嗅覚関連プロセスを損なうためと結論付けています。つまり嗅覚異常は重度の炎症が原因だということがわかりました。
そして咳や熱の症状がなくなっても嗅覚が戻るまで2週間近くかかるのは、この炎症が治まるまでに時間を要すからだといいます。
興味深いのは彼らの別の研究で、同じような炎症が脳にも広がることが発見されたことです。コロナ後遺症には頭痛、頭にかすみがかかったように集中できなくなるブレーンフォグ、睡眠障害などが多く報告されていますが、これも炎症が原因かもしれません。
そして、脳の炎症は体の炎症に比べずっと長く続くこともわかってきていて、研究が進めばコロナ後遺症の原因解明、治療にもつながると期待が高まっています。
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