緑内障は「40歳以上の20人に1人」が該当、9割は未発見…見えていても発症の可能性あり

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 緑内障は視野が徐々に欠け視力が低下していく病気で、40歳以上でリスクが高くなる。3月6日から12日まで、国内の公共施設やランドマーク、多数の医療機関などにおいて、緑内障のシンボルカラーであるグリーンにライトアップする運動「ライトアップ in グリーン運動」が展開中だ。実行委員長である「たじみ岩瀬眼科」(岐阜県多治見市)の岩瀬愛子院長に、運動を通して伝えたいことを聞いた。

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「伝えたいのは、早期発見、継続、希望という3つのキーワードです。緑内障を他人事と思わず検診で早期発見につなげてほしい。治療の継続が大事だと理解してもらいたい。進行して発見された人や、すでに今進行している人は、見えている部分を失わないために治療法は年々改善されているので希望を持って治療を続けてほしい」

 この運動は、国際的な緑内障啓発活動期間である世界緑内障週間の事業として、2015年から国内5カ所で始まり、その後、日本緑内障学会の公式事業として次第に活発化。今年は、国内で約670カ所の実施となった。現在は海外にも、「light-up in Green」の名前で広がり始めている。

 岩瀬院長によれば、「緑内障はいまだ適切に認識されているとは言い難い状況」だという。

 日本緑内障学会が岐阜県多治見市で大規模な疫学調査「多治見スタディー」を行ったのは2000~01年。学会の総力をあげて取り組んだ事業で、岩瀬院長はその現地担当者だった。

「多治見スタディーでは程度の差はあれ、40歳以上の20人に1人は緑内障との結果が出ました。そして別の特徴として、未発見者が多く(全体の89.5%)、自覚症状がないため検診を受けておらず、目の検査といえば視力検査でいいと思い込んでいる人が大半であることが分かったのです」

 これではいけないと、眼科医らは多治見スタディーの結果をあちこちで報告し、講演会や検診などを行った。

「ところが外来を訪れる患者さんの傾向は一向に変わりません。進行してからようやく受診する人が後を絶たないのです」

■強度の近視は高リスク

 加齢でリスクが高くなる病気には白内障があり、手術で治せる。緑内障の症状を白内障と間違い、手術で治ると思って受診する人も多い。

「眼科で緑内障と診断され、全員が失明するわけではないのに、短絡的に緑内障イコール失明とつなげ、絶望感でパニックになる人もいました」

 ライトアップ運動では、まだまだ足りない緑内障についての正しい知識を広めようとしている。押さえておくべき点は次の通りだ。

【見えていても緑内障】

「緑内障のほとんどは両目に起こりますが、進行スピードが異なります。一方の目で、もう一方の見えにくさをカバーするため、見え方の変化を自覚しにくい。見えていても異常なしとは言えない。眼科医が行う眼科検診を最低でも3~5年に1回受けてください」

 ただし、過去に「緑内障の疑いあり」「眼圧が高い」「視神経乳頭陥凹拡大(視神経の中央部のへこみが大きくなった状態)」のいずれかを指摘された人、または「強度近視」「家族に緑内障がいる」「ボールを目にぶつけたことがある」などのいずれかに該当する人は、1年に1回の眼科検診が必要だ。

【緑内障の再検査で異常なし、で安心しない】

「再検査では異常なしでも、その次は違う可能性があります」

 前項で触れたようにできれば年1回の検診を。

【だれでも発症する可能性がある、と自覚する】

 これが非常に重要だ。

「高齢者の病気と思われがちですが、多治見スタディーで示すように、40歳以上はだれでもリスクがある。だれにでも眼科検診が必要なのです」

 緑内障は失明リスクのある病気だが、点眼薬の治療の継続で進行を抑えられ、日常生活に支障が出ない状況を保てる。早期発見、そして定期的な検診と治療の継続が肝要なのだ。

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