疲れ・むくみ・こむら返りに潜む「足の病気」 コロナ禍だからこそ注意

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 新型コロナ禍での生活は3年目に突入した。この間、仕事もリモートワーク中心で、一日中、家で過ごしてじっとしているという中高年も多いのではないか。その中で、足が「むくむ」「疲れやすい」「かゆい」「痛い」「こむら返りが多い」という症状があるとしたら、足の静脈の病気を疑った方がいいかもしれない。放っておくと重篤な肺の病気を起こすこともある。「四谷・血管クリニック」(東京・四谷)の保坂純郎院長に聞いた。

「新型コロナウイルス感染症による巣ごもり生活で心配なのが足の静脈の病気です。とくに気をつけたいのが下肢静脈瘤と深部静脈血栓症(DVT:エコノミークラス症候群)です」

 下肢静脈瘤とは、心臓に向かう血液が逆流しないための静脈の“弁”が壊れることで起こる病気のこと。血液が逆流することで体の下部にたまり、足がむくむ、だるい、火照る、痛む、血管がボコボコと浮き出るなどの症状が表れる。

「この病気は男性より女性に多いといわれます。女性は男性より筋肉量が少なく、第2の心臓といわれるふくらはぎのポンプ作用が弱いからです。妊娠や出産した人はホルモンの変化から、さらに発症しやすいとみられています。また、学校の先生ら長時間の立ち仕事をしている人や会社の経理ら座り仕事をして血流不全に陥っている人に多く見られます。また、高齢で血管が脆弱化した人、下肢静脈瘤の身内がいる遺伝的要素がある人、肥満や脂質異常症の人らも注意したい病気です。すぐに命に関わるわけではありませんが、放っておくと湿疹や皮膚の硬化、色素沈着などを起こし、最悪は潰瘍で足に穴が開くこともあります」

 悪化した時や完治のためには手術をすることになり、原因となる血管をレーザー治療や医療用接着剤で閉塞させる、こぶ状の静脈瘤に硬化剤を入れて固めて消失させる、などの方法がある。

 この病気が厄介なのは足の血管が浮き出たり、こぶのようなものができなければ大丈夫だと言えないことだ。

「見た目は普通に見えても下肢静脈瘤だった、というケースもよくあります。それを見分けるために重要なのは『むくみ』です。誰でも長時間同じ姿勢を取っていたり、立ちっぱなしだったりすればむくみが表れますが、通常は一晩寝れば治ります。しかし、そうでなかったり、片側の足だけがむくんだりしていれば病気を疑った方がいいかもしれません。慢性化したむくみには、心臓、腎臓、肝臓などの病気が隠れているケースもあります。その鑑別のためにも早めの診察が必要です」

■突然死の原因になるケースも

 一方、DVTは体の深部に位置する静脈の中で血液が固まってしまう病気。自動車や飛行機に長時間同じ姿勢で座っている時に発症することが多い。通常は足に起こるが、血栓がはがれて肺に到達して重篤な症状を起こし、最悪、突然死することが知られている。

「この病気の特徴は片足が腫れて痛みを生じ、肌の色が変わることです。安静時でも痛みますが、歩く時はさらに強くなります。ただし、この病気もまったく痛みのないケースもあるため簡単に判断できません。そのため、診察には下肢全体の腫脹など臨床的特徴をスコア化した『Wellsスコア』と、『Dダイマー』と呼ばれる血栓が分解された時に出る物質の数値が欠かせません。また、実際に血栓の有無を調べるために静脈の超音波検査を行います」

 人によっては血栓が腹部や肺にまで及んでいる場合がある。その時には造影剤を使ったCT検査を行うこともある。

「いずれにせよ、新型コロナ禍でじっとしている中高年は下肢静脈瘤やDVTを発症したり、進行している可能性は高いと見た方がいいでしょう」

 気になるのは足の血管病を持つ人が新型コロナ感染症に感染した時の影響だ。当初、「新型肺炎」と考えられてきた新型コロナ感染症だが、実は血管の病気であることが明らかになっており、重症化の時に顕著に出るという。実際、新型コロナ感染症が重症化すると、これまでの感染症にはあまり見られないDVTに加えて、脳梗塞、心筋梗塞、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、静脈血栓塞栓症(VTE)などの循環器疾患を同時多発的に発症することが多く、重度の血管内皮障害を伴うことが報告されている。

 日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会の調査でもVTEが重症者に多いことがわかっている。

「新型コロナ感染症は血管内皮がサイトカインストームなどで血栓ができるとされますが、いまのところ、下肢静脈瘤やVTEの人が新型コロナ感染症になりやすいとか感染すると重症化しやすいという報告はありません」

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