脈の乱れは「心房細動」のサイン 知っておきたい5つのリスク

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
症状があっても対策ゼロの人が8割

 3月9~15日は、心房細動週間だった。推定患者数100万人超の心房細動は不整脈の一種だが、症状や対策を知らない人が多いのでは? 京都府立医科大学循環器内科学不整脈先進医療学講座の妹尾恵太郎講師に心房細動について聞いた。

 不整脈には、心臓のリズムが速くなる「頻脈性」と、遅くなる「徐脈性」があり、心房細動は前者に含まれる。加齢とともになりやすくなり、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、高血圧、甲状腺機能亢進症などを持っていると起こしやすく、糖尿病、肥満、脂質異常症なども要因になる。

 医療機器メーカー「オムロン ヘルスケア」が男女1098人に行った調査では、心房細動の認知度は61.8%。不整脈の症状である「脈の乱れ」を感じたことがある、また時々あると感じたことがある人は約18%。しかし、約78%の人が何の対策もしていなかった。

「心房細動についてしっかり知識を持ってもらいたいのは、主に5つのリスクを招くからです」

【死亡リスク】

「2005年の海外のデータでは、心房細動患者は、非心房細動患者と比べて死亡リスクが約3倍。そのうち、突然死も少なくありません」

【心不全】

 ある段階を超えると、入退院を繰り返して死に至るのが心不全だ。

「心房細動患者さんで死亡以外のイベントで一番多いのが心不全入院です。心房細動における心不全の発症率と、心不全における心房細動の発症率は年々同じペースで増えています」

【脳梗塞】

「脳梗塞の2~3割は心房細動が関係しているといわれています。心房細動患者は非心房細動患者と比べ、5倍脳梗塞を起こしやすいですし、心房細動が原因の脳梗塞は命に関わる重篤なものが多く、命が助かっても後遺症が出やすいです。脳梗塞を回避するために抗凝固剤を服用するのですが、飲み忘れがあると、それが1日であっても、脳梗塞のリスクが高くなり、毎日服用する必要があります」

【認知症】

 心房細動が認知症のリスクを1.4倍高めることも指摘されている。

「心房細動は脳梗塞を起こしやすいので、そもそも脳血管性の認知症を起こしやすい。加えてアルツハイマー型認知症や老人性認知症も起こしやすいとの報告があります。心房細動の人は、脳血流量の低下のみならず高血圧や糖尿病といった生活習慣病を抱えていることも多いため、それらが認知症のリスクを高めている可能性があります」

【生活の質が下がる】

 心房細動は、動悸、息切れ、疲れやすさなどの症状がある。それらが日常的にあれば、生活の質が落ちるのは当然だ。

 では、対策は?

「心房細動は症状が乏しい人、症状が出ていない人もいます。症状があっても次第に慣れ、自覚しづらくなるケースも珍しくない。とにかく自分の心臓のリズムを知ることが大事。脈を測定する検脈でわかります」

 一度でも動悸、息切れ、疲れやすさを感じたことがある人、それらを感じた覚えはないが65歳以上の人、心臓病、高血圧、甲状腺機能亢進症、糖尿病、肥満、脂質異常症がある人は、1日1回、決まった時間に安静にした状態で脈を測定する。普段から記録をつけ、それより速い・遅い、いつもと違って脈が乱れている場合は、かかりつけ医、または循環器疾患を診ている医師に相談する。

「病院へお越しいただければ、さまざまな検査で確定診断をつけることが可能です。心房細動と診断がつけば、患者さんの状態に応じた治療方法を提案することができます」

 自分の脈もそうだが、老親がいる場合は、親にもぜひ検脈を勧めたい。

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