健康マーカーを知る

血糖値(上)過去3年分のHbA1C数値が上昇傾向なら要注意

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 生活習慣病の代表格ともいわれる「糖尿病」。厚労省が実施した「2016年国民健康・栄養調査」によると、国内の糖尿病が疑われる成人の推計は1000万人、糖尿病予備群と考えられる人も1000万人いるとされている。これは国内の成人の6人に1人が糖尿病あるいは予備群ということになる。

 食事によって腸から吸収されたブドウ糖は血液の中に入る。すると健康な人は、すぐに膵臓からインスリンというホルモンが分泌されて血液中の糖分は肝臓や筋肉に取り込まれる。通常、血糖値(血液に溶けているブドウ糖の量)は2時間ほどで元の100㎎/デシリットルに下がる。ところが血糖値が常に高い人はインスリンが働きにくい体質になっている。そのためインスリンが分泌されても血糖値が十分に下がらないまま、高止まりする。それを繰り返すうちに、空腹状態でも血糖値が126㎎/デシリットル未満に下がらなくなる。これが糖尿病だ。

 1型糖尿病は、生まれつきインスリンを分泌する能力が弱くなる病気。日本人の糖尿病の95%を占める2型糖尿病は、生活習慣病が原因でインスリンの働きが低下する。血糖値が高くなると、血液がドロドロして毛細血管が詰まりやすくなる。「ズボラでもラクラク! 薬に頼らず血糖値がぐんぐん下がる!」(三笠書房)の著者で、「芝浦スリーワンクリニック」(東京都港区)の板倉弘重名誉院長が言う。

「糖尿病が怖いのは『神経障害』『網膜症』『腎症』といった合併症です。最近分かってきたことで大切なのは、糖尿病合併症は糖尿病と診断されてから起こるのではなく、糖尿病になる前の予備群の状態から徐々に進行しているということです。食後過血糖も見逃さないように、健康被害の備えが大切です」

■正常範囲内でも糖尿病合併症は進行している

 糖尿病の疑いがあるかどうか健康診断(採血)で測るのは、朝ご飯を食べないで測定する「空腹時血糖値」になる。126㎎/デシリットル以上は糖尿病が疑われる。しかし、血糖値は常に変化しているので、検査時にたまたま低い値を示しただけかもしれない場合もある。

 そこで健診では「Hb(ヘモグロビン)A1c」という数値も測定している。血液中に増えたブドウ糖はヘモグロビンと結合し、糖化ヘモグロビンになる性質がある。ヘモグロビンの総数は一定だが、ブドウ糖の量が増えれば糖化ヘモグロビンの数も多くなる。HbA1cは、すべてのヘモグロビンに占める糖化ヘモグロビンの割合を示した値(%)で、2カ月程度はそのままの状態で血液中に存在している。そのため長いスパンでの平均値を知ることができるのだ。HbA1cは、6.5%以上になると糖尿病が強く疑われる。

■破壊されたβ細胞は元に戻らない

 糖尿病が他の病気と違うのは、薬で血糖値を正常な範囲内に戻すことはできるが、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞の働きそのものを元に戻すのは困難なところ。予備群から糖尿病に進んでしまうと、一生、糖尿病と闘うことになる。つまり、治療し続けなければ、再び高血糖を引き起こし、合併症を発症するリスクが生じるのだ。

「多くの人は健診の空腹時血糖値とHbA1cの値が基準値内に収まっていれば、『ああ、大丈夫だ。よかった』と、安心してしまって数値をじっくりと検討することはありません。しかし、しっかりと数値を確認してほしいのは、むしろ基準値に収まっている人です。昨年、一昨年と過去3年分くらいの結果と照らし合わせて、ジワジワと数値が上昇していれば危険が迫っていると考えなければいけません」

 食品には血糖値を上げやすいものと、いくら食べても上がらないものがある。その違いを正しく知っておくことが、血糖値を低く維持するために重要になる。しかし、いまだに肉や肉の脂身が血糖値を上げると信じている人がいる。それが大きな間違い。血糖値を上げるのは糖質を多く含む食品で、主に次の4種類になる。

①炭水化物(米、小麦、そば、トウモロコシなど)
②でんぷん(いも類、ニンジン、カボチャなど)
③砂糖を使う食品(お菓子、ケーキ、清涼飲料水など)
④フルーツ

 うどん、パスタ、そば(十割そば以外)、ラーメンなどの麺類は小麦から作られている。麺類をよく食べるという人は、週1回にするなど頻度を減らした方が無難。血糖値を上げないためには、1日当たりの糖質摂取量200~250グラム、炭水化物のエネルギー比率50%が当面の目標になる。次回は、それを達成するコツを紹介してもらう。

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