名医が答える病気と体の悩み

やせ形なのに「ぽっこりお腹」 考えられる病気はあるのか

腎臓内科医の高取優二氏
腎臓内科医の高取優二氏(提供写真)

 下腹部が出る「ぽっこりお腹」は、通常は腹横筋や腹斜筋といったお腹回りの筋肉の衰えで内臓の位置が下がったり、食べすぎや運動不足によって皮下脂肪や内臓脂肪が蓄積されることが原因になります。

 しかし、やせ形なのに病気で腹部だけがぽっこり出るケースは主に4つあります。

 まずは、①肝硬変です。症状の一つとして、「腹水」があり、内臓と内臓の隙間に水がたまります。胃や小腸を巡った血液は門脈を通り、肝臓へ流れますが、肝臓が硬くなると血流が悪くなります。それによって血漿成分が門脈の外へ染み出し、腹水となってたまるのです。また、アルブミンの低下による血管からの水分漏出も腹水がたまる原因になります。肝臓はタンパク質を合成する役割がありますが、肝機能が低下すると、水分を保持し、血液を循環させるタンパク質の一種であるアルブミンが減少します。それによって血管から水分が漏れ出るのです。

 ②がん性腹膜炎でもぽっこりお腹になるケースがあります。胃がんや大腸がん、肺がんなどさまざまながんが原因で、お腹の中にがん細胞が転移した状態です。体重は減少しますが、症状としてお腹に水がたまることがあります。

 ③腎不全も原因のひとつです。慢性腎臓病が進行し腎不全になった場合、腎臓の機能が低下し、アルブミンが体外に排泄されます。それによって、低タンパク血症となり、腹水の症状が表れます。

 ④ネフローゼ症候群も考えられます。体内のタンパク質が尿として多量に排出され、血液中のタンパク質が減ってしまう病気です。タンパク質には水分を蓄える役割があるため、血液中にタンパク質が足りなくなると水分が血管から外に出ていくのです。それによって、むくみや腹水につながります。

 通常の「ぽっこりお腹」との違いは、お腹を叩くことでも分かります。側面から叩いてみて、反対側の側面が波打つように動くのが特徴です。体重が変わらないのに下腹部が出てきたなら、重病のサインかもしれないので、病院を訪ねることをお勧めします。

▽高取優二(たかとり・ゆうじ) 2000年3月鳥取大学医学部医学科卒業、同年4月に岡山大学医学部内科学第三講座入局。岡山大学病院腎・免疫・内分泌代謝内科学医員、尾道市立市民病院腎センター長などを経て、20年から埼友草加病院勤務。日本腎臓学会専門医・指導医など。

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