コロナ第7波に備える最新知識

本当にワクチンは不要? 不信感が強いいまこそ丁寧な説明が必要

3回目接種を受ける女性
3回目接種を受ける女性(C)共同通信社

 新型コロナワクチンの接種が始まって1年余り。当初は“打ちたくても打てない”状態だったが、すっかり様変わり。12歳以上は3回接種が努力義務とされたにもかかわらず、ワクチンを拒む人が増えてワクチンの大量廃棄が報じられる始末。4回目接種の対象者も3回目接種から5カ月以上経った60歳以上の人、18歳以上で基礎疾患のある人、抗がん剤治療をしていたりして免疫が抑制された人、BMI30以上の肥満の人など限定的となった。なぜか。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師に自身の考えを聞いた。

◇  ◇  ◇

「国民のワクチンへの不信感が強いのは、3回目の接種は2回目から8カ月後と言われて待っていたら、年明けからオミクロン株の大流行が起こり、ワクチンの効果を実感できなかったからではないでしょうか。一方で国は、4回目接種後データがイスラエルのものしかなく、効果について科学的な根拠が限定的であることを理由に対象者を絞ったのでしょう」

 ちなみにイスラエルの4回目接種の対象者も医療従事者、18歳以上の重症化リスクのある人、それに60歳以上の人。4月に発表された論文では重症化リスクを防ぐ効果は3回目の接種の人に比べて接種後36~42日目で4.3倍高かった。その一方、感染を防ぐ効果は22~28日では2倍高かったが、50~56日目には1.1倍に低下した。

「このデータから感染を防ぐ効果や重症化を防ぐ効果があることは明らかですが、接種効果を維持するには数カ月でこの先何回も打たなければ身を守れないことに注目し、うんざりした日本人も多かったのではないでしょうか。オミクロン株の大流行の結果、接種効果を実感できていない日本人も多いと思います。さらに、ワクチン接種部位の痛みや腫れ、発熱や倦怠感などの副反応が強調される一方で、接種後に感染する人が一定数いることは、ワクチンの目的からすると当然のことだという報道がほとんどありません。ウイルスがアルファからオミクロンまで姿を変えたのに、1年前に開発されたワクチンで効くのか、との不安もあると思います」

 しかも、ワクチン接種歴別の新規陽性者数のデータ解析方法の問題点を指摘され、4月11~17日分を境に数字が変わり、改めて計算したところ日本のワクチン効果について混乱が生じた。

「政府は定期的にワクチン接種歴別の新規陽性者数を公開していますが、最新の5月25日公開のデータを見ると、40代、60代、70代ではワクチン未接種者に比べて、2回接種者は10万人当たりの新規陽性者数が多かった。そのため、ワクチンの効果はないと考えた人もいるかと思いますが、2回目接種から6カ月以上経てば感染予防効果がなくなったとも言えます。むしろ注目すべきは、3回目接種済みを除く2回目接種者と3回目接種者を比較すると、すべての年代で新規陽性者率は明らかに低下していることです」

 ワクチン接種の動機付けとなる接種効果に関するデータの解釈を適切に伝えていないことがワクチン不信に拍車をかけたのは間違いない。

「現在のワクチンが効かず、より重症化する新型コロナの感染拡大が起これば、新たに開発されたワクチンを再び国民全員に接種することが必要になる可能性もあります。政府はワクチン接種に関するこうした不安や不信についてはもちろん、いつ誰に、何を目的として必要なのか、国民が納得できる説明をいまこそ丁寧にすべきではないでしょうか」

関連記事